2019 Fiscal Year Research-status Report
ポリケタイド合成酵素の基質受け渡し機構の解明を目指した高分解能構造解析
Project/Area Number |
19K15746
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 隆平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員 (10836703)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | X線結晶構造解析 / ポリケタイド合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ型ポリケタイド合成酵素は多数のドメインから構成され、ドメイン間で基質を受け渡しながら反応を進め、複雑なポリケタイド骨格をつくる。基質を運ぶドメインの動きは、基質結合や各ドメインによる反応・動きと連動すると予想されるが、その詳細は不明である。本研究では、全ドメインが揃ったポリケタイド合成酵素の立体構造を、基質を観測可能な高分解能で観測することで、基質受け渡し機構に迫ることを目標とする。 2019年度は、典型的なモジュール型ポリケタイド合成酵素のDEBS1と炭素数34の大型マクロライドをつくる反復型酵素kPKSの大腸菌での発現系の構築を行った。また、特徴的な基質特異性をもつチオエステル加水分解酵素ElbBの結晶学的な解析も行った。DEBS1については、共同研究者から供与されたプラスミドを用いて大腸菌での発現系を構築した。培地や発現誘導・菌体破砕などの条件を検討し、目的酵素が可溶性で得られる条件を見つけた。kPKSについては共同研究者から供与されたcDNAをもとに、大腸菌での発現系を構築したが、大腸菌での発現は確認できなかった。 ElbBは、基質が他酵素による修飾を受けて初めて反応を触媒するというユニークな基質認識機構をもつ。その機構をもたらす構造要因を明らかにするために、結晶構造解析に着手した。共同研究先で既に確立されていた方法を用いて目的酵素を精製し、結晶化を行った。その結果、ポリエチレングリコールを沈殿剤とする条件で結晶が得られ、これまでに1.49オングストローム分解能のフルデータ収集に成功している。分子置換を試みたが、構造決定には至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DEBS1とkPKSについては大腸菌での発現系の構築が難航したが、DEBS1については可溶性酵素が得られるに至った。一方、採択期間中に新たに着手したElbBについては、結晶が得られ、十分な分解能のフルデータを取得できた。ただし、受入研究者の移動に伴って機器の引っ越しなどがあったため、1ヶ月ほど実験がままならない期間があった。このような状況から、進捗状況はやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
DEBS1については、得られた酵素の精製条件の検討を行い、結晶化を試みる。kPKSの大腸菌での発現は一旦中断し、共同研究者が有する他の反復型酵素の遺伝子を用いて、大腸菌で発現しやすいものを探す。ElbBは、セレノメチオニン体またはネイティブ結晶を用いたSAD法での位相決定を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は野生型酵素の精製条件を決定して基質との複合体を作製する予定であったが、まだ精製条件検討を進めているところであるため、基質を購入しなかった。次年度使用額は基質の購入に充てる。
|