2020 Fiscal Year Research-status Report
ポリケタイド合成酵素の基質受け渡し機構の解明を目指した高分解能構造解析
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19K15746
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 隆平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員 (10836703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / ポリケタイド合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、基質がP450による修飾を受けて初めて反応を触媒するという厳密な基質特異性をもつチオエステル加水分解酵素ElbBについて結晶学的研究を進めた。昨年度からさらなる結晶化スクリーニングを進めたことで、新しい結晶化条件で従来よりも大きく良質な結晶が得られた。昨年度と今年度に得られた2つの条件で得られた結晶を用いて重原子誘導体結晶を作製し、SAD法による位相決定を試みた。重原子試薬として用いたのは、K2PtCl4, K(Au(CN)2), HgCl2, チメロサール, 5-amino-2,4,6-triiodoisophtalic acidである。しかし、どの結晶でも重原子が入っていることは確認できなかった。次に、今年度得られた質の高い結晶を用いてPhoton Factory BL-1Aの長波長X線によるNative-SAD法を試みた。しかし、このとき用いた数十個の結晶が全て双晶になっており、位相決定が可能なデータを取得できなかった。 糸状菌由来の反復型ポリケタイド合成酵素(PKS)については、大腸菌で可溶性に取得できなかったkPKS以外に複数のPKSのcDNAを共同研究者から頂き、大腸菌発現系の構築に取り組んだ。しかし、大腸菌発現ベクターへのクローニングが難航し、クローニング出来たものも大腸菌での発現は確認できなかった。また、昨年度に可溶性画分に取得できていたモジュール型PKSのDEBS1は、アフィニティーカラム精製でカラムにほとんど吸着せず、精製が進められなかった。このことから、この酵素は可溶性に得られているがフォールディングが適切でなく、アフィニティータグがタンパク質外部に露出していないと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ElbBの結晶は得られているものの、位相決定に時間がかかってしまっている。また、モジュール型および反復型ポリケタイド合成酵素は、可用性酵素を調製することができず、その後の実験に着手できていない。上記の状況から、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ElbBは、最近ホモログ酵素の結晶構造が報告されたため、この構造による分子置換を試みる。反復型ポリケタイド合成酵素については、糸状菌由来酵素の構造学的研究での使用例があるピキア酵母での異種発現を試みる。
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Causes of Carryover |
ポリケタイド合成酵素の研究が思うように進まず、研究計画を修正したため。次年度は、ピキア酵母での異種発現実験にこの経費を使用する。
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