2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト型糖鎖生合成酵素と相同性を有する昆虫由来酵素群の構造機能相関解明と応用展開
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19K15748
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮崎 剛亜 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 助教 (30775721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | N結合型糖鎖 / O結合型糖鎖 / 糖転移酵素 / 糖質加水分解酵素 / カイコ / 糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒトの糖タンパク質糖鎖の生合成および生分解に関わる糖転移酵素および加水分解酵素と相同性を有するカイコ由来酵素とその他の糖質関連酵素の構造機能解析を行った。 1. カイコ由来GnTIVオルソログは、前年度までにクローニングした配列が不完全であったため、ヒトGnTIVのC末端側領域に相当する部分の塩基配列を同定し、それを含む全長のcDNAをクローニングした。また、種々の可溶性タンパク質タグとの融合タンパク質としての発現を検討した結果、昆虫培養細胞およびカイコ虫体での発現と精製に成功した。 2. カイコ由来α-L-フコシダーゼを大腸菌宿主発現系にて調製し、精製酵素を用いて網羅的に基質特異性の解析を行った。種々のフコース含有オリゴ糖のみならず、ピリジルアミノ化によって標識をしたコアフコース糖鎖や、α-1,3またはα-1,6-コアフコース糖鎖を含む糖タンパク質に対し、フコースを遊離する活性を示した。無脊椎動物由来のα-L-フコシダーゼの糖タンパク質糖鎖に対する活性を調べた例は過去になく、本成果は、国際学術誌Insect Biochem. Mol. Biol.に論文として発表した。 3. 近年、腸内細菌から同定された糖質加水分解酵素ファミリー31(GH31)に属するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼのホモログをカイコなどの鱗翅目昆虫は水平伝播によって獲得している。本研究では、カイコ由来ホモログ(BmNag31)が糖タンパク質のO型糖鎖を分解する活性を有することを示した。比較として、腸内細菌Enterococcus faecalis由来酵素(EfNag31A)のX線結晶構造解析を行い、触媒ドメインの立体構造をGH31 α-N-アセチルガラクトサミニダーゼとして初めて明らかにした。BmNag31およびEfNag31Aの研究成果は、それぞれ国際学術誌Insect Mol. Biol.およびFEBS Lett.に論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた糖転移酵素の結晶構造解析には至っていないが、従来の方法では組換え発現が困難であった糖転移酵素の発現と精製をすることができたのは、今後の研究を遂行するための重要な進展である。また、関連する糖質加水分解酵素の機能および立体構造解析が予想以上に進展しており、複数の論文発表に至っている。そのため、総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題として残っているのが、複数の糖転移酵素の立体構造の解明である。本年度において確立した組換え発現系を用いて酵素を大量に調製し、結晶化と構造解析に取り組む。また、独立したドメインと予想される領域のみを発現させ、糖結合能の解析や立体構造解析を行うことを計画しており、結果がまとまり次第、論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって出張の予定がキャンセルされ、旅費での使用が不可能になったため、研究計画を一部前倒しにして消耗品を購入した。繰越額は2021年度分と合わせて実験を遂行するのに必要な消耗品に充てる予定である。
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Research Products
(18 results)