2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来肝オルガノイドによるヒト胎児肝造血の再現
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19K15753
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角出 啓輔 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (20826458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒト造血幹細胞 / 胎児肝 / ヒトiPS細胞 / 胎児造血 / 星細胞 / 類洞内皮細胞 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト造血幹細胞(HSC)は、幅広い疾患に対して移植医療を提供するが、供給は常に不足しており、増幅法開発が望まれてきた。ヒトHSCは、胎児肝臓において最も活発に増殖することから、胎児肝造血環境の解析が重要と考えられたが、倫理的に胎児肝臓を研究対象とすることは難しい。そこで、ヒトiPS細胞より胎児肝臓を構成する各種細胞を誘導し、ヒトHSC増幅環境を構築することを目指して研究を開始した。 2019年:ヒトiPS細胞株から胎児型肝細胞(肝芽細胞;iHep),類洞内皮細胞(iLSEC)及び星状間質細胞(iSt)の表現型を有する細胞の分取に成功した。iHepをヒト胎児由来の臍帯血HSCと共培養すると、胎児肝造血の形質である高い赤血球産生を検出した。 2020年度:一方、LSECとiStはHepG2と共培養する方法であった為、分取できる細胞の終了並びに表現型の実験間差が大きかった。本年度では、iPS細胞から一旦静脈性血管内皮細胞を介する誘導を試みることで、HepG2非存在下にて、蛍光標識ヒアルロン酸を蓄積するiLSECの安定誘導に成功した。また、retinol蓄積を有するCD166強陽性CD271陽性細胞については、一旦細胞塊にした上で、insulin添加量を増加させることでHepG2不含誘導に成功した。現在、誘導細胞とヒト臍帯血HSCとの共培養実験を進めている。これら細胞は、iHep:iSt:iSEC=1:0.5:0.1の割合でEZsphere dish上にて混合播種したところ、足場物質不使用条件でも直径0.5-1.5mmの混合細胞塊が形成された。しかし、これをマトリゲル3次元培養並びに回転培養系に適用したところ、3週に及ぶ長期培養には耐えなかった。いずれもiHepのみが生存し、iLESC及びiStが急激に失われた。原因として、栄養因子の補充不良及び培養液中への足場分子流出が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019-2020年度は、1) ヒトiPS細胞より胎児肝を構成する各種細胞の誘導並びにヒト造血幹細胞との共培養、及び 2)これらによる肝オルガノイドの作製並びにマウスへの埋設を計画した。しかし、2020年度に採択者が所属機関を異動する必要があり、それに伴う研究環境の再構築によって計画に遅れが生じている。 1) 異動先機関でも、ヒトiPS細胞由来胎児肝構成細胞の安定な誘導は順調に成功し、ヒト造血幹細胞との共培養実験を順次開始している。 2) 肝オルガノイド作製については、マトリゲルによる3次元培養及び回転流動培養を試みたが、いずれも長期培養には耐えられなかった。現在、in vitroで3週以上の長期に肝オルガノイドを培養可能な実験系の構築を急いでいる。重症免疫不全マウスへの移植に関しては、異動元機関におけるSARS-CoV2影響下で新規実験制限のため、異動先機関における重症免疫不全マウスへの移植実験環境整備の必要のために、現在まで実施出来ていない。現在、異動先機関における動物実験体制の構築を急いでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果により、肝芽細胞様細胞、星細胞様細胞及び類洞内皮細胞様細胞の誘導並びに検出方法を確立した。現在、SARS-CoV2影響下での動物実験制限並びに機関異動に伴う実験体制再構築のため、全ての動物実験を2021年度実施に変更する。 本研究には、1) 各種誘導細胞とヒト臍帯血HSCとの共培養によるヒトHSC活性支持の有無及びその期間の評価、2) 人工的に構築したヒト胎児肝様オルガノイドおけるヒトHSCの造血が胎児肝造血に類似するか否かの検討、3) 胎児肝様オルガノイドにおけるヒトHSC活性支持の有無及びその期間の評価が必要である。 そこで、2020年度までの成果により、胎児肝を構成する各種細胞の誘導が可能となったため、現在、1) の共培養実験を遂行中である。また、2),3)については、in vitroにおける長期培養が困難であったことから、2021年度には、重症免疫不全マウスへの埋設によるマウス内ヒト胎児肝構造の構築を先んじて実施するように計画を変更する。本年度は、動物実験体制が整い次第、ヒトHSCの活性評価を必須とする実験を順次実施する。ヒトiPS細胞から誘導した各種胎児肝構成細胞と臍帯血HSCとの共培養実験は、これに並行して実施する。
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