2019 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母における「積極的な」窒素カタボライト抑制解除機構の解明
Project/Area Number |
19K15755
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大澤 晋 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (70823631)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PAF複合体 / アミノ酸トランスポーター / カタボライト抑制 / リボソームプロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素カタボライト抑制解除に関する因子として、これまでに転写伸長制御に関するPAF複合体が分かっていた。今年度の研究においては、PAF複合体に関連するSAGA複合体の関連明らかにし、SAGA複合体の脱ユビキチン化に関する機能が重要であることも変異株の解析から明らかとなった。PAF複合体とSAGA複合体が制御するユビキチン化の基質として、ヒストンH2Bが知られている。本研究では変異体を用いた解析によって、ヒストンH2Bのユビキチン化が窒素カタボライト抑制制御には必須ではないことがわかり、ヒストンH2B以外のユビキチン化基質が重要であることが示唆された。 これまでに、窒素カタボライト抑制の解除には、分裂酵母細胞から分泌される新規脂肪酸誘導体(nitrogen signaling factor; NSF)によって引き起こされる経路が見出されている。NSFの感受性をPAF複合体のmutant(prf1破壊株)を用いて調べたところ、NSFへの感受性が著しく下がることが分かった。このことからNSFはPAF複合体を介して窒素カタボライト抑制を解除することがわかった。 窒素カタボライト抑制解除にPAF複合体によって制御されるアミノ酸トランスポーターを特定するために、RNA-seqとリボソームプロファイリングによって転写と翻訳効率をそれぞれ解析した。その結果、複数のアミノ酸トランポーターが転写レベルで、SPAC1039.01によってコードされるアミノ酸トランスポーターの翻訳レベルでPAF複合体に制御されることが分かった。それらのPAF複合体が制御するアミノ酸トランスポーターの遺伝子破壊株が窒素カタボライト抑制条件での生育の遅延がみられた。これらのことからPAF複合体が複数のアミノ酸トランスポーターを制御することで、窒素カタボライト抑制を解除し、生育することが分かった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素カタボライト抑制解除に関連する新たな因子の同定については、PAF複合体に関連する因子を中心に、窒素カタボライト抑制の解除に関連する因子の同定を試み、新たな因子としてSAGA複合体やユビキチン化制御に関わる因子を同定した。また、PAF複合体自体の制御機構の解明についてはPAF複合体自体のNSFによる制御を見出した。さらに、PAF複合体によるアミノ酸トランスポーターの制御機構の解明について、RNA-seqやリボソームプロファイリングによって制御されるアミノ酸トランスポーターの特定と窒素カタボライト抑制解除時のアミノ酸取り込みに関わるかについて調べ、PAF複合体によって転写レベルや翻訳レベルで制御されるアミノ酸トランスポーターを同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
PAF複合体の窒素カタボライト抑制の解除メカニズムの解明のために、前年度に見出されたアミノ酸トランスポーターの翻訳効率をPAF複合体がどのように制御するかについての研究をRNAの成熟化や核外輸送、翻訳制御に関わる遺伝子の変異株などを用いて、どのステップが重要かを確かめる。またPAF複合体やSAGA複合体によって制御されるユビキチン化タンパク質を同定するため、質量分析を用いた方法によって同定を試みる。さらに、NSFによってPAF複合体がどのように制御されるかについて、PAF複合体の量や活性に関連する既知のリン酸化制御について変異株を用いた実験や生化学的な実験により明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、参加予定の学会が中止となったため、旅費に計上していた分を繰り越すこととなったため。また、今年度、実施予定であった質量分析の実験を次年度に行うことになったため。
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