2021 Fiscal Year Research-status Report
新奇機能性食品素材の応用に向けたガセリ菌の膜小胞に関する研究
Project/Area Number |
19K15770
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
白石 宗 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70725168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Lactobacillus gasseri / 膜小胞 / リポテイコ酸 / バイオジェニクス / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宿主と相互作用することが知られている「膜小胞(MV)」に関して、乳酸菌のような有用細菌においてMVの知見がまだまだ少ないことに着目して、ヒト腸内乳酸菌のMVの免疫誘導能および、菌体との脂質構成や内包タンパク質の違いなどの特徴を明らかにすることで、MVを新たなバイオジェニクスとした機能性食品素材への応用の可能性を評価することを目的とした。今年度は以下の成果が得られた。 L. gasseri JCM 1131T および比較対象として Staphylococcus aureus ATCC 10832 を使用して、MVの精製を行い、回収率、含有タンパク質および核酸量の再現性を確認した。精製方法は、一般的なMV精製法である超遠心を用いた。透過電子顕微鏡により、得られた画分中にMVの存在を確認した。 L. gasseri JCM 1131T と S. aureus ATCC 10832 から、それぞれ湿重量で8.1 mg/g cellと6.7 mg/g cellの粗精製MV画分が得られた。タンパク質および核酸含有量は、それぞれ L. gasseri で8.1 ug/mg、4.1 ug/mgであり、S. aureus で0.2 ug/mg、2.1 ng/mgだった。前回の結果と比較すると、S. aureus のMV画分のタンパク質が今回約20倍ほど少なかったが、その他はほぼ再現が確認された。L. gasseri に比べて、S. aureus のMV画分には核酸量が少なく非常に興味深い。また、これらのMV画分を使用して、菌体との膜脂質組成を比較するため、まずは菌体から脂質を抽出して、カラムによってリン脂質、糖脂質、中性脂質に分けて、GC-MSで分析したが、再現のある結果が得られなかった。今後は、脂質構成分析を進めるとともに、MVの免疫誘導能評価を優先的に進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、ヒト腸内乳酸菌の L. gasseri のMVの免疫誘導能および、菌体との脂質構成や内包タンパク質の違いなどの特徴を明らかにすることで、MVを新たなバイオジェニクスとした機能性食品素材への応用の可能性を評価することが目的である。そのため、本年はL. gasseri JCM 1131T および比較対象として S. aureus ATCC 10832から粗精製MV画分を取得して、それぞれの回収率、含有タンパク質、核酸の再現性を確認した。さらに、これらの脂質構成を菌体と比較するためGC-MSによる分析を行ったが、再現ある結果が得られなかった。次年度ではこれらの分析を進めるとともに、早急に免疫誘導能の評価に取り組む予定である。以上のことから、当初の計画より遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヒト単球細胞株THP-1細胞とMV画分を使用してTHP-1細胞から産生されるIL-8, IL-6, TNF-a, IL-10, IL-12をELISA法によって定量することで免疫誘導 能の評価を行う予定である。その他、L. gasseri と S. aureus における菌体由来およびMV由来の脂質構成比較、タンパク質のSDS-PAGE、銀染色による比較を行 うことで、両者が有する脂質やタンパク質の違いを評価することで、免疫誘導能に差があった場合の原因の一端を明らかにできる可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも遅れており、それに伴い本来行うはずであった試験等が出来なかったため次年度使用額が生じた。さらに、旅費として計画していた金額も、コロナ禍のため、未使用であった。次年度は、ヒト単球細胞の培養関連消耗品やELISAキット、脂質分析に関する費用が必要であり、これら消耗品の購入として繰り越した金額の使用を計画している。
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