2020 Fiscal Year Research-status Report
澱粉の老化に伴うゲル構造および結晶構造の形成が老化澱粉の物性に及ぼす影響
Project/Area Number |
19K15772
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
石橋 ちなみ 県立広島大学, 地域創生学部, 助教 (80823418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 澱粉 / 老化 / 結晶 / テクスチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
澱粉の老化過程では,様々な物理的な構造変化(ゲル構造や結晶構造の形成)が生じ,多数の要因が老化に影響することから,老化による構造変化と物性との関連性を系統的に明らかにした研究はみられない。本研究では,老化澱粉の物理的な構造形成機構(ゲル構造,結晶構造)と物性変化との関連性を明らかにすることを目的とし,令和2年度はDSC,X線回折測定,動的粘弾性測定,テクスチャー測定,顕微鏡観察によって澱粉ゲルの老化による構造および物性変化を調べるとともに,水分量,保存温度の影響を検討した。 試料は小麦澱粉を用いた。澱粉ゲルの調製方法は,澱粉含量が15%,30%,50%になるように澱粉-水混合物を調製し,シート状に広げた澱粉-水混合物を加熱糊化後,4℃または25℃で保存を行った。測定は,冷却直後(0時間),3時間,8時間,1日,3日,5日,7日後の試料で行った。以下,澱粉30%・保存4℃の澱粉ゲルの結果を中心に報告する。 テクスチャー測定では,針状プランジャーを用いて貫通試験を行い,最大応力,破断歪を求めた。結果,保存3日目までは,保存時間の経過とともに最大応力および破断歪は有意に低下した。保存3日目以降は,最大応力は急激に増加した一方,破断歪は変化が認められなかった。すなわち,保存3日目までは,保存に伴い脆いゲルに,3日目以降は脆さに加えて硬いゲルになることが明らかとなった。DSCでは,保存1日目に老化澱粉の融解ピークが認められ,保存1日目には老化澱粉の結晶化が生じることが確認された。なお,澱粉15%・保存4℃の澱粉ゲルは保存3日目,澱粉50%・保存4℃のゲルは保存3時間で老化澱粉の融解ピークが認められた。澱粉30%・保存4℃の澱粉ゲルで,保存3日目以降に最大応力が増加していったことは,老化澱粉の結晶化が進んだためと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,澱粉含量を2種類で行う予定であったが,澱粉含量を変えた計3種類(15%,30%,50%)に実験系を増やしたためである。実験系を増やした理由は,澱粉30%のゲルで実験を進めていく中で,澱粉の老化が進みにくいと考えられる低濃度の系(澱粉15%)でも検討した方が,澱粉の構造形成機構と物性変化との関連性を明らかにできると考えたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の計画は,結果の整理・考察や追加実験に充てているため,結果の整理等を行うと同時に,研究補助を依頼するなど実施体制を強化して,遅延している項目について早急に実施する。
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Causes of Carryover |
令和2年度は消耗品費および旅費として予算を計上したが,次の理由で研究費は使用しなかった。 消耗品費については,試料(小麦澱粉),ガラス器具等を購入する予定であったが,研究の進捗がやや遅れており,令和元年度に購入した機器および消耗品で実験を継続することができた。また,旅費についても,新型コロナウイルスの影響により学会が中止になったこと,出張が制限されていたことで予算を使用することができなかった。 令和3年度は引き続き実験を継続するため,消耗品費として使用するとともに,遅延している項目については研究補助を依頼して,謝金として使用する予定である。
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