2019 Fiscal Year Research-status Report
γ-オリザノールの活用増進に向けた生体における吸収代謝・植物での生合成経路の解明
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19K15783
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 隼哉 東北大学, 農学研究科, 助教 (50781647)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | γ-オリザノール / 吸収代謝 / 生合成 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、質量分析による詳細な分子種解析を基盤にし、生体におけるγ-オリザノール(OZ)の吸収代謝および植物体での生合成経路を明らかにする。応募者はこれまでに、質量分析をはじめとした種々の分析技術を基盤に、高感度・高選択的な分析手法を開発し、機能性成分の吸収と代謝機構を評価するとともに、その活性本体が何であるのかを理解することを常に念頭に置き研究に取り組んできた。この研究戦略のもと、OZがそのままの形で生体に存在することを見出し、OZの吸収代謝研究に大きな影響を与えた。さらには、米以外には存在しないと考えられていたOZ分子種が大麦にも存在することを明らかにした。本研究では、これらの知見をもとに、生体におけるOZの活性本体や作用機序の理解を真に深めるとともに、いまだ明らかでない、米や大麦等におけるOZの生合成経路を解明し、OZの活用を通じた健康実現の基盤創造を目指す。そのために、質量分析を駆使し、OZおよび生体における代謝物、植物体での生合成における前駆体を分子種レベルで解析する。この解析結果をもとに、OZの活性本体の解明を目指した生体における吸収代謝機構の解明と、OZを含む代表的な植物体である米や大麦におけるOZの生合成経路の解明を目指す。具体的には、1)OZの活性本体の解明を目指した生体における吸収代謝機構の解明、2)-1大麦に存在するトリテルペンアルコール型OZ分子種の構造決定と分布の評価、2)-2米や大麦におけるOZの生合成経路の解明、これらに取り組み、OZの活用を通じた健康実現の基盤創造を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)OZの活性本体の解明を目指した生体における吸収代謝機構の解明 令和元年度は、γ-オリザノール(OZ)の分子種の違いが、血中への移行や代謝物(フェルラ酸やフェルラ酸抱合体)の生成に影響を与えることを見出した。さらに、OZが代謝物として抱合体(硫酸抱合体やグルクロン酸抱合体、等)として存在する可能性も考えられるが、そのような報告もない。OZ抱合体を調製するとともにLC-MS/MSを用いた分析法を構築した。以上より、OZ分子種のそれぞれについて、OZそのものに加え、代謝物(フェルラ酸、OZ抱合体)を詳細に解析する準備が整った。
2)-1 大麦に存在するトリテルペンアルコール型OZ分子種の構造決定と分布の評価 2)-2 米や大麦におけるOZの生合成経路の解明 令和元年度は、すでに手がかりを得ていた、米にのみ含まれると考えられていたOZ分子種が大麦にも含まれる可能性を、質量分析やNMRによる構造解析を進めた。そして、この分子種がフェルラ酸24-メチレンシクロアルタニル(24MCAFA)であることを明らかにした。さらに、大麦では24MCAFAがOZの大部分を占めることが示唆された。さらに、品種に違わず24MCAFAが主要なOZ分子種であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)OZの活性本体の解明を目指した生体における吸収代謝機構の解明 令和2年度は、分子種の違いが血中への移行や臓器への蓄積に影響を与える可能性をさらに詳細に評価するために、OZ分子種ごとの吸収代謝の違いをさらに検証するとともに、種々のモデル動物や無菌動物を用いて、OZの吸収代謝に関わる因子を探索する。
2)-1 大麦に存在するトリテルペンアルコール型OZ分子種の構造決定と分布の評価 2)-2 米や大麦におけるOZの生合成経路の解明 令和2年度は、全く明らかとなっていない、大麦におけるトリテルペンアルコール型OZの存在部位の検討を進める。米では糠部分にOZが豊富に含まれることが知られており、大麦でも同様に糠部分にOZが豊富である可能性が考えられる。そこで、原麦から段階的に搗精を進め、搗精画分におけるOZ濃度の解析からその分布を推定する。さらに、イメージングMSも活用しその推定分布を詳細に解析する。加えて、OZの生合成経路の解明を目指し、OZ分子種に加え、トリテルペンアルコールや植物ステロール、フェルラ酸等を質量分析を駆使して詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、参加予定であった学会が中止となったため。 計画:令和2年度の消耗品費および旅費として使用する。
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