2019 Fiscal Year Research-status Report
行動神経栄養学を用いた発酵乳による認知機能障害予防法の確立
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19K15797
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
長澤 麻央 名城大学, 農学部, 助教 (80759564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 記憶 / 想起 / メタボローム解析 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は想起に関わる脳内の変化を捉えることを目的として研究を進めた。マウスの想起を誘導するために想起誘導試験を実施した。本試験では、装置内に同じ物体を2個設置した状態で物体を自由に探索させることで、物体に関する記憶を「記銘」、「保持」させるという工程を3日間連続して行った。4日目に、一方の物体を新奇物体に置き換えることで動物に既存物体と新奇物体を提示し、物体に関する記憶を「想起」させた。対照群には同じ物体を設置した状態の試験を4日間行い、「記銘」、「保持」はさせるものの「想起」させない状態とした。対照群と想起誘導群の脳を採取し、GC-MSを用いたメタボローム解析を実施した。その結果、神経伝達物質であるグルタミン酸自体の変動は確認されなかったものの、グルタミン酸神経伝達に関わる代謝産物の変動が確認された。次に、想起が遺伝子発現動態に及ぼす影響を明らかにするために、ナノポアシーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析も併せて実施した。得られたリード数は試料(サンプル)によってばらつきはあるが、得られたリードの質(Quality scoreのカットオフ値を設定)は十分であったためパスウェイ解析を実行したところ、ニューロトロフィンやWntのシグナル伝達経路、そして、グリセロリン脂質の代謝経路が想起のメカニズムに関与する可能性が示された。しかし、ナノポアシーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析は新しい技術であるため、現在は再現性を得るための追加実験を実施しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、メタボローム解析やトランスクリプトーム解析を実施することで想起のメカニズムに関与する可能性のある代謝経路や遺伝子の存在を確認できた。想起を誘導してから数分程度で脳内の代謝産物や遺伝子発現が変化するとは考え難いと専門的な会議等で指摘を受けたこともあったが、事実として代謝産物や遺伝子発現の変動が確認できた。特に遺伝子レベルで変動するものが多く、想起に直接的に関わってくるものの特定はできなかったが、次年度はより複雑なエンリッチメント解析を実施することで、想起のメカニズムを明らかにできるにではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
想起に関わる脳内の変化を特定することが次年度の課題である。本年度に進めたメタボローム解析ならびにトランスクリプトーム解析の再現性を得るための再現実験を進める。得られたデータからパスウェイ解析だけでなく、Protein-Protein Interaction Databaseを用いたPPI解析も実施し、想起のメカニズムに関わる代謝経路ならびに遺伝子の探索を進める。siRNAを用いて、特定した代謝経路を障害させるような、あるいは、想起に直接関わる遺伝子をノックダウンすることで、これらの代謝経路や遺伝子が想起へ及ぼす影響を明らかにする予定である。また、記憶機能を障害させたモデルマウスも作製し、本モデルにおけるメタボローム解析やトランスクリプトーム解析を実施することで、他方面からも記憶のメカニズムに迫る。
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