2020 Fiscal Year Research-status Report
行動神経栄養学を用いた発酵乳による認知機能障害予防法の確立
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19K15797
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
長澤 麻央 名城大学, 農学部, 助教 (80759564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知機能 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、酸化ストレス誘導性の認知機能障害モデルを作製し、メタボロミクスの面から認知機能障害のメカニズムを詳細な理解を目指した。ガラクトース(125 mg/kg)を6週間経口投与することで認知機能障害モデルを作製した。本モデルを用いて、バーンズ迷路試験ならびにY字迷路試験を行った結果、認知機能の低下が誘導されていることが確認された。一方で、自発運動を評価するオープンフィールド試験ならびに不安様行動を評価する高架式十字迷路試験においては影響が確認されなかった。以上より、これまでの報告通り、ガラクトースの長期摂取によって認知機能が損なわれていることを確認した。本モデルを用いて、認知機能障害に起因する脳内代謝異常を明らかにするためにメタボローム解析を実施した。短期記憶との関連が示唆されている海馬において、Adenosine-monophosphateやDehydroascorbateの減少が確認された。長期記憶との関連が示唆される大脳皮質においては、PhosphoethanolamineやAspartate、Glutamateの減少が確認された。また、パーキンソン病で認められる認知機能障害との関連が示唆されている線条体において、Pantothenateの減少やLactate、Gamma-aminobutyrate、Glycineの増加が確認された。それぞれの脳部位において、ガラクトース投与の影響を受けている代謝産物データを用いてPathway解析を実施したところ、海馬においてSphingolipid Metabolism、大脳皮質においてMalate-Aspartate Shuttle、Aspartate Metabolism、、線条体においてPhosphatidylinositol Phosphate Metabolismの代謝経路に影響が現れていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、認知機能に関連する代謝経路や遺伝子の特定を行う予定であった。代謝経路については、海馬におけるSphingolipid Metabolismや大脳皮質におけるMalate-Aspartate Shuttle、線条体におけるPhosphatidylinositol Phosphate Metabolismが認知機能障害によって影響を受けていることを明らかにした。これらの結果から、細胞膜を構成するリン脂質代謝やミトコンドリア代謝の異常が認知機能と密接に関わる可能性が示された。他の認知機能障害モデルでも同様の代謝経路に影響が現れているかを確認するため、アミロイドβ投与モデルの作製も行った。このモデルでは、想定していた程の認知機能障害が誘導されなかった。具体的には、Y字迷路試験で軽度の認知機能障害が認められたもののバーンズ迷路試験では認知機能障害が誘導されなかった。海馬、大脳皮質、視床下部におけるメタボローム解析を実施したが、顕著な代謝異常は確認されなかった。現在、アミロイドβの種類や投与濃度の検討を実施している。認知機能障害モデル作製の遅延に伴い、認知機能障害に関連する遺伝子群の特定に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
認知機能のメカニズムの詳細を明らかにするためには、数種類存在する認知機能障害モデルで共通した脳内代謝の変化や遺伝子発現動態の変化を特定する必要がある。引き続き、アミロイドβ投与モデルの作製を続ける。一般的に用いられているアミロイドβ(1-42)だけでなく、脳に強い酸化ストレスを誘導するアミロイドβ(25-35)を用いることで明確な認知機能障害の誘導を目指す。また、作製が容易であるスコポラミン長期投与モデルを採用することで、迅速に認知機能障害モデルを作製する。これらのモデルを用い、脳内代謝ならびに遺伝子発現動態の異常箇所の特定を進める予定である。アミロイドβ側脳室内投与あるいはスコポラミン長期投与後に認知機能障害が誘導されているかを行動表現型解析から確認し、さらに、脳内のマロンジアルデヒド濃度や抗酸化酵素活性、活性酸素種の測定を行うことで脳に酸化ストレスによるダメージが蓄積されているかを明らかにする。その後、メタボローム解析ならびにトランスクリプトーム解析を実施する。得られたデータから、Enrichment解析や統合オミクス解析を行い、認知機能障害のメカニズムの一端を明らかにする。
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