2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of cultivation guidelines and a method for bulk quantitative analysis of anthocyanin in black rice in order to give a new added value to the products
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19K15798
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
山本 涼平 龍谷大学, 農学部, 実験助手 (70767540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 紫黒米 / アントシアニン / HPLC / 抗酸化活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
紫黒米は抗酸化能を有するアントシアニンを豊富に含むことが知られているが、アントシアニンは環境条件や品種によってその組成は大きく異なる。したがって、健康食品など紫黒米の高付加価値化を目指すためには、品種ごとの正確なアントシアニン組成データとそれに裏付けられた栽培指針の確立が不可欠である。しかしながら、特に紫黒米についてこれらの関係を詳細に解析した研究事例は少ない。そこで本研究では、①紫黒米に含まれる約20種類のアントシアニンを一括して定量できるHPLC分析法を確立しプロファイリングを行うこと、②環境条件に対する品種別の特性を明らかにし、それぞれの栽培指針を設定することの2点を主目的とした。 研究最終年度である本年は、前年度に引き続き水田圃場で約50品種の紫黒米を栽培し、最終的に複数年分のサンプルを得た。総アントシアニン含量をpH differential法を用いてスクリーニング的に定量するとともに、新たに抗酸化活性の測定(DPPHラジカル消去活性試験)を平行して行った。これまでに高いアントシアニン含量を有することが分かっている"朝紫"や"おくのむらさき"に加えて、"むらさきの舞"や"中国黒米"なども高いアントシアニン含量を有していた。全てのサンプルの測定が終了していないが、紫黒米のアントシアニン含有量(および総ポリフェノール量)と抗酸化活性との間には、現段階で非常に強い相関関係が認められている。またHPLCによる詳細な成分分析では、多くの品種でアントシアニンの70%以上がシアニジン3グルコシドで占めることに変わりはないが、シアニジンの二糖配糖体やペオニジン3グルコシドなど、品種ごとに少量成分の組成は異なることが明確になってきた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により十分にプロファイリングが進展していない。研究期間を一年間延長し、環境条件を含めた品種特性の解析に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて大きく変わった研究環境は昨年度から改善されず、十分に研究を進めることが依然として困難であった。そのため本年度中に終了する予定であったアントシアニン分析の一部が完了していない。紫黒米のアントシアニン含有量(および総ポリフェノール量)と新たに測定している抗酸化活性との間には、現段階で非常に強い相関関係が認められており、これは同じく抗酸化活性などの健康機能性で着目されている有色米の赤米と異なる。紫黒米だけに確認されたこの結果は、健康機能性などの点で高い付加価値となり得る。しかしながら、現在全ての品種の解析が終わっていない状態かつ、年次間差異など観点からも検討する必要があり、十分な結果が得られたとは言えない。従って一年間の研究期間の延長を申請することとした。以上のことから、進捗状況としては遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を開始してから、約50品種の有色米について4年分のサンプリングが終了した。現在は、昨年度から引き続きアントシアニン組成のプロファイリングを行っているが、機能性スクリーニングの観点からDPPHラジカル阻害活性試験(抗酸化活性)などを平行して進めている。これらの測定を出来る限り年度早期に終了させ、アントシアニンの含有量における統計解析(主成分分析などの多変量解析、および抗酸化活性との相関解析)にとりかかる。また一方で、アントシアニン量が年次間で上下する点について品種間でも差異が認められているが、昨年度栽培を開始した分を加え4年分のデータとすることで、栽培環境に対する品種別の特性が見えてくると考える。 以上により、最終年度である本年は紫黒米それぞれの品種特性や品種間差異などを明確にし、これらの結果を学術論文としてまとめるとともに、研究目的の一つである品種ごとの栽培指針の設定に応用したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響が昨年度から続き、消耗品などの一時的な欠品なども完全には改善されず、また参加を予定していた学会が本年度も中止またはオンラインとなった。これらの理由から、計画通りの予算執行が困難となり次年度に繰り越すこととした。 翌年度分として請求したこの助成金については、研究成果をまとめるための費用(特に最終年度であるので論文投稿費など)、対面での開催が予定されている学会の参加費用として使用する。
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