2019 Fiscal Year Research-status Report
イオウ依存型エネルギー代謝機構の解明:発酵科学・医学生物学のニューパラダイム
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19K15803
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30781728)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオウ呼吸 / 活性イオウ |
Outline of Annual Research Achievements |
発酵生産は生育に必要なエネルギーを目的の有用物質の代謝に活用するため、目的物質の生産性が増加するに伴い、生育遅延がしばしば起こる。従って、目的物質の生産性の向上は、細胞の生育と生産性のバランスを上手く維持しながら、これまで進められてきた。しかし、細胞が有するエネルギーの総量が決まっているため、従来の代謝工学を活用した方法には限界がきている。最近、応募者らは、酵母を含む真核生物において、新規なエネルギー代謝である「イオウ呼吸」を発見した。本研究では、酵母におけるイオウ呼吸を巧みに利用することで、生育と生産性を共に増強させるエネルギー代謝機構に基づき、発酵生産を飛躍的に改良する手段を提唱する。 令和元年度では、酵母におけるイオウ呼吸の基礎的知見を得るために、キー酵素であるsulfide quinone oxidoreductase(SQR)遺伝子(HMT2)を破壊した株を構築し、その株の解析を行った。その結果、SQR破壊株はミトコンドリアのエネルギー代謝活性が減少し、細胞内ATP含量も減少することがわかった。さらに、細胞内のイオウ代謝化合物の変動も見られ、イオウ呼吸が完全に停止していることが判明した。また、この株は野生株に比べ、経時寿命が大幅に下がることも見いだした。今後、SQRの機能を高める薬剤や変異株を取得することで、ATPや還元力を多大に消費する発酵に適した菌株の構築が可能となると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通りにSQR破壊株を用いた基礎的解析を行い、酵母におけるイオウ呼吸の基礎的な知見を得ることができた。一方で、当初計画していたイオウ呼吸促進薬や遺伝子の探索の開始が、スクリーニング系の構築に時間がかかったため若干の遅れがある。現在はスクリーニング系の構築が終わり、探索を開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、イオウ呼吸促進薬や遺伝子の探索を行い発酵に適した株の構築を行う。遺伝子の同定後は過剰発現系の構築を行い、実際にアスタキサンチンやリジンなどのATPや還元力が必要な発酵物を生産してみる予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験が効率よく進み、条件検討用に取得していた研究費が必要なくなった。このため、次年度に計画しているスクリーニングの規模を若干拡大して、より効果的なスクリーニングを進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)