2019 Fiscal Year Research-status Report
RNA結合蛋白質Mex3Bによる脂肪細胞分化制御機構の解明
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19K15804
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨志田 祐己 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任研究員 (50835759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA結合タンパク質 / 脂肪細胞分化 / PPARγ / C/EBPβ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はRNA結合タンパク質Mex3Bの欠損マウスはやせ型を呈し、Mex3B欠損マウス由来のMEFは脂肪細胞への分化が抑制されることを見出してきた。本研究では、このMex3Bによる脂肪細胞分化制御機構の解明を試みた。昨年度の研究では、次世代シーケンサーを用いたMex3Bタンパク質結合RNAの網羅的な同定の結果、脂肪細胞分化初期に寄与すると考えられている転写因子C/EBPβが結合候補RNAであることを見出した。また、Mex3Bと代表的な因子との結合を個別に検証した結果、脂肪細胞分化制御を担う主要な転写因子PPARγも候補因子であることを見出した。 続いて、Mex3BがPPARγ、C/EBPβ両因子の発現制御に与える影響を検討した。具体的にはMex3Bを強制発現もしくは欠損させた細胞を用いて脂肪細胞への分化誘導を行った。その結果、PPARγはmRNAレベルで、C/EBPβはタンパク質レベルでMex3Bによる発現制御を受けることが明らかになった。 Mex3Bは脂肪細胞分化刺激によって、発現抑制を受けることを見出している。Mex3Bを強制発現させた細胞では脂肪細胞分化が抑制されることから、正常な脂肪細胞分化にはMex3Bの発現抑制が不可欠であると考えられる。そこで、どのような因子が脂肪細胞分化時におけるMex3Bの発現抑制に関与するのかを明らかにするため、各種の脂肪細胞分化誘導薬の添加/非添加条件下で脂肪細胞分化誘導を行った。その結果、Mex3Bの発現抑制には核内受容体GRが寄与することが見出された。しかしMex3Bのプロモーター領域にはGRの応答領域は認められず、Luciferase assayの系ではGRによるMex3Bプロモーター活性の変化は見られなかった。一方で、GRの活性化は、Mex3Bプロモーター領域へのRNA polymerase IIのリクルートを抑制することを見出し、クロマチンのリモデリングが起きていることが示唆された。以上の結果より、脂肪細胞分化過程におけるMex3Bの発現抑制にはGRが重要な役割を担うことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究の結果、RNA結合タンパク質Mex3Bが結合し、発現制御を担うことで、脂肪細胞分化の制御を行う標的候補因子としてPPARγとC/EBPβという二つの転写因子を見出すことに成功した。さらに、これらの二つの因子はそれぞれmRNAレベルとタンパク質レベルという異なる段階において発現制御を受けていることが明らかになった。Mex3Bは各標的mRNAの3’UTRに結合していたことから、PPARγについてはmRNAの安定化、C/EBPβについては翻訳を制御することにより発現を制御していると考えられる。 また、脂肪細胞分化過程におけるMex3Bの下流因子の探索に留まらず、上流に位置する因子の解析も行った、その結果、脂肪細胞分化誘導時において、Mex3B発現制御因子として核内受容体GRの同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究結果を踏まえて、本年度ではこれまでに同定したMex3B結合候補因子がMex3Bによる脂肪細胞分化制御に対して貢献していることを明らかにする。具体的には、Mex3Bを過剰発現もしくは欠損させた細胞を脂肪細胞へと分化誘導を行う。この時、候補因子であるPPARγ及びC/EBPβをレスキューした時に生じる脂肪細胞分化効率の変化を検討することで、Mex3Bが各因子の発現制御を介して脂肪細胞分化制御に与える影響を検討する。さらにこの時、3’UTRを付加したPPARγ及びC/EBPβをそれぞれ並行して強制発現させ、同様に脂肪細胞分化効率の変化を検討することで、Mex3Bが各因子の3’UTR領域に作用することで脂肪細胞分化制御に影響を与えているかを検討する。同様の検討を、Mex3BのRNA結合ドメインであるKH domainに変異を導入したMex3B KH mutantを用いて行う。 続いて、Mex3BによりPPARγ mRNAおよびC/EBPβタンパク質の発現が変化する分子機構を明らかにする。Mex3Bは各mRNAの3’UTRに結合することから、それぞれmRNAの安定化、ならびに翻訳を制御することで発現を制御していると考えられる。そこで、mRNAの安定化が変化していることをActinomycin Dを用いた解析で、翻訳効率が変化していることをリボソームの重合量の変化を調べることでそれぞれ検討する。さらに、Mex3BはmiRNAの作用を介して標的因子の発現制御を担っていることが明らかとなっているため、PPARγとC/EBPβのmRNA配列を解析し、作用を担うmiRNAを同定する。 以上の解析を通じて、Mex3Bが担う脂肪細胞分化制御機構の解明を行う。
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Research Products
(2 results)