2019 Fiscal Year Research-status Report
真核生物に共通する新規な一酸化窒素合成機構の解明およびその生理的役割の理解
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19K15808
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 雄樹 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (30807483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酵母 / 一酸化窒素 / ペントースリン酸回路 / NADPH |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに一酸化窒素(Nitric oxide : NO)合成に関与するタンパク質の探索を目的としたスクリーニングを通して得られた候補タンパク質に関して、一酸化窒素合成能への影響をNO特異的な蛍光プローブDAF-FM DAを用いて評価した。いくつかの候補タンパク質を欠損した菌株においては、野生型株と比較して過酸化水素処理に応じたDAF-FMに由来する細胞内蛍光強度の上昇量の減退が確認された。 これまでに過酸化水素処理条件下におけるNO合成機能の低下が示唆されたペントースリン酸回路(Pentose phosphate pathway)の機能欠損株における表現型の解析を行った。その結果、PPP欠損株はこれまで酸化的なストレス条件に対して極めて感受性であることが知られている。これまでの報告での評価方法とは異なりコロニー形成率によって過酸化水素暴露後の生存率を評価したところ、極めて高いストレス耐性を示した。また、NADPH供給の主要な役割を果たすPPPに代わる代替NADPH産生経路を強化した菌株では、ストレス耐性が見られなくなった。このことから、液体培養時に過酸化水素を処理し、その後のコロニー形成率を評価する解析方法においては、NADPHの枯渇に伴い高いストレス耐性を獲得する機構の存在が示唆された。また、このPPP欠損株は過酸化水素処理条件だけでなくNO暴露条件に対しても高いストレス耐性を示した。これらの結果から、細胞内NADPH量の低下に起因したストレス耐性獲得機構の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スクリーニングを通して得られた候補タンパク質とNO合成能への関連性が示唆されたものも存在するが、現時点では決定的といえる候補は得られていない。そこでこれまでにNO合成機能の低下が示唆されたペントースリン酸回路(Pentose phosphate pathway)の機能欠損株における表現型解析に注目した解析を主に行ったため、当初予定した成果と比較して遅延していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、酵母におけるNO合成に関与するタンパク質の探索は継続して遂行する。 しかし当初の予定とは少し変更して、PPP機能欠損株における表現型の解析に注力することとする。前述の研究実績にて見いだされた表現型の要因を解明することで、研究を進展させる。 また、PPPにおいてNADPH産生に関与する初発酵素であるグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼおよび3番目にあたる6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼの欠損株はそれぞれ表現型に差異が観察されたため、これらの表現型の違いについても解析を行う。
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Research Products
(3 results)