2019 Fiscal Year Research-status Report
初期の胚発生過程において染色体分配異常の頻度が変化する原因の解明
Project/Area Number |
19K15811
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
京極 博久 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (20726038)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 染色体分配 / 微小管 / 卵母細胞 / 初期胚 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は分裂の際に娘細胞に染色体を正確に分配し,遺伝情報を維持する。ところが,哺乳類の卵母細胞の減数第一分裂や初期の胚発生過程においては,染色体が不均等に分配される頻度がほかの分裂に比べ非常に高いことが知られている。このような染色体の分配異常が,ダウン症など重篤な先天性疾患や不妊の主要な原因と考えられている。この不均等分配の頻度は母体の年齢に大きく影響を受けることが分かっており,そのリスクは現代社会における少子化の一因であるとも考えられるが,なぜ卵母細胞や初期胚において染色体の不均等分配の頻度が高いのかは長い間わかっていない。卵母細胞や受精卵は体細胞に比べて非常に大きな細胞質を持ちます。そこで,本研究では,この細胞質量の変化が染色体分配異常の頻度を変化させていると考え,紡錘体を主に構成している微小管に着目して研究を行った。最初に,細胞質量による動原体微小管安定性を変化させる要素の特定を行った。顕微操作により細胞質サイズや核/細胞質比(N/C Ratio)を変化させた卵母細胞を作成し,それらに対して光活性化-GFP-Tubulinを用いた高解像度ライブイメージング解析により,安定な動原体微小管とその他の微小管成分を分けて解析した。その結果,卵母細胞と初期胚において核/細胞質比(N/C Ratio)が微小管安定性を変化させていることが明らかとなった。次に初期胚は胚発生に伴ってN/C Ratioが変化することから,初期胚を用いて,同様の実験を行った。その結果,胚発生においても細胞質サイズの変化に伴って微小管の安定性が変化することを確認した。最後に,また,動原体微小管安定化因子を同定のため質量分析法(Mass Spec)を用いたスクリーニングを行いいくつかの候補因子を発見した。今後それらに対するノックアウトマウスを作成し詳細なメカニズムの解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,紡錘体を主に形成する動原体微小管に着目して,初期の胚発生過程において染色体分配異常の頻度が変化する原因明らかにしていくことを目的に実験を行った。まず,細胞の大きさと染色体分配異常の頻度との相関関係を明らかにするために卵母細胞を用いて,顕微操作により細胞質サイズや核/細胞質比(N/C Ratio)を変化させ,細胞質量による動原体微小管安定性の変化の解明,動原体微小管安定性を変化させる要素の特定を行った。具体的には,動原体微小管の安定性を解析する手法としてPhotoactivation(光活性化)-GFP-Tubulinを用い染色体近傍を光活性化し高解像度ライブイメージングを行う。蛍光強度の変化を測定した後,Double exponential curve fittingを行うことで,安定な動原体微小管とその他の微小管成分を分けて解析した。そこ結果、微小管の安定性はN/C Ratioに依存して変化することが明らかとなった。次に初期胚を用いて,実際に,細胞質サイズが変化するに伴って動原体微小管の安定性が変化するのかを調べた。その結果,胚発生においても細胞質サイズの変化に伴って微小管の安定性が変化した。さらに,質量分析法(Mass Spec)を用いたスクリーニングによりN/C ratioによって変化する動原体微小管安定化因子の同定を試みている。顕微操作を用いて,核,細胞質,紡錘体に分けてサンプリングし質量分析を行った。その結果,いくつかの有力因子が発見された。このように,計画していた研究は順調に進んでおり,ノックアウトマウスの作製にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析法(Mass Spec)を用いたスクリーニングにより同定された動原体微小管安定化因子に対するノックアウトマウスを作成し詳細な動原体微小管安定性の分子機構の解明を行う。これらを明らかにし,これまでの結果と合わせることで,巨大な細胞質サイズが,卵母細胞や初期の胚発生において染色体分配異常の頻度が高い原因であるという説を提唱できる。
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