2019 Fiscal Year Research-status Report
生体高分子を標的としたテラヘルツ波照射による細胞機能制御
Project/Area Number |
19K15812
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 祥他 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 基礎科学特別研究員 (50798345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テラヘルツ / アクチン / 光制御 / 細胞機能制御 / 生体高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
THz波出力技術の進歩により、高分子構造を十分に励起可能な高強度THz波光源が近年開発された。しかし、高強度THz波の照射による生体内高分子への影響は未だ解明されておらず、THz波による細胞機能の制御を目的とした研究も行われていない。そこで本研究では、アクチン繊維を標的に高強度THz波照射による生体高分子影響を解明した。アクチン繊維を蛍光プローブにより可視化し、高強度THz波(周波数4THz)の照射による影響を顕微鏡により経時的に観察した。その結果、細胞内のアクチン繊維がTHz波の照射強度に依存して切断され、断片化することを発見した。また、この切断現象はTHz波が到達できない水深約2 mmに設置された細胞内でも観察された。THz周波数帯は水に吸収されやすく、4 THzでは約0.01 mmしかその光エネルギーは伝搬しない。そこで、THz波が水分子に吸収された後、他のエネルギーとして水溶液中を伝搬する可能性を検証した。その結果、THz波がアクチン繊維に直接作用したのではなく、水表面で吸収された光エネルギーが衝撃波として水溶液中を伝搬し、細胞内のアクチン繊維構造を変化させることを明らかにした。人体において2 mmはヒトの皮膚に相当する厚さであり、本研究の成果はTHz波の影響が皮膚組織の深部まで到達する可能性を示している。また、アクチン繊維は細胞内の多様な機能に重要な役割を持つことから、THz波照射によるアクチン繊維制御を介した細胞機能制御の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
THz波の照射により、細胞内のアクチン繊維構造を操作できる可能性が示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
THz波によるアクチン繊維の制御について、周波数、照射強度及び影響範囲(距離)など多くの条件を確立できている。この情報を基盤に、今後はアクチン繊維の構造操作を介した細胞機能制御の可能性を検証する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大により、一部の実験および出張が取り消しとなったため。中止になった計画を次年度実施する。
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