2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of causal genes controlling the flowering period and numbsers in Nelumbo nucifera.
Project/Area Number |
19K15819
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
石綱 史子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (40772281)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハス / Nemumbo nucifera / 交配後代集団 / RAD-Seqジェノタイピング |
Outline of Annual Research Achievements |
ハスは農業・園芸的価値が高い作物である。品種間交雑、自然変異体からの選抜によりそれぞれの目的に合わせた特性を持つ品種が作出され、広く栽培されている。ハスの開花期や開花数の遺伝学的な研究は非常に限定的で未だ不明な点が多い。本研究では、ハスの開花期と開花数を制御している原因遺伝子の同定およびそのメカニズムの解明を目的としている。独自の交配後代集団を作出し、その集団内の形質評価、DNAマーカーを用いたRAD-SeqジェノタイピングとQTL解析を行う予定で研究をすすめている。この結果は、ハスのDNAマーカー選抜育種法の確立に寄与し、ハス育種の効率化および利用目的に合わせた育種への貢献が期待できる。 令和元年度は、①交配後代集団の作出、②交配後代集団の形質評価、③RAD-Seqジェノタイピングについて研究を行った。 ①交配後代集団の作出:約200系統あった個体数のうち約50個体が枯死した。栽培地の変更による環境の変化(冬期の低温)、日照不足、鳥害などが原因と考えられる。令和元年度に、新たに親系統‘紅君子蓮’の自家受粉を行い約300粒の種子を得た。 ②交配後代集団の形質評価:交配後代集団および親系統の形質評価を行った。種子の大きさ、開花の有無、開花した個体の花の花色、花弁数、開花日、雄蕊の花弁、葉柄の高さ、葉身の長径と短径、休眠期の地下茎の大きさなどの評価を行った。いくつかの形質が顕著に分離していることが確認された。 ③RAD-Seqジェノタイピング:当初の計画では、令和2年度にRAD-Seqジェノタイピングを行う予定であったが、計画を前倒しし、親系統を含む約100系統のRAD-Seqジェノタイピングを行った。生育が良好な系統を用いDNA抽出、ライブラリー調整、シークエンスを行った。ハスの葉を試料としたDNA抽出、ライブラリー調整の方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体として、概ね順調に進展していると判断した。研究の各項目について以下に示す。 ①交配後代集団は約500系統の育成を目指していたが、令和元年度の栽培で約50系統の植物体が枯死した。令和元年度3月末時点、約150系統栽培を継続している。令和元年度に新たに親系統の自家受粉を行い、約300粒の種子を得ることができた。令和2年度春にはこららの種子を播種し、新たな系統が得られる予定である。令和2年度3月末までには、合計で350~400系統の交配後代集団となる見込みである。多くの系統が枯死したことは予定外ではあったが、新たな系統を得ることにより、遅れは補完できると予測している。これらのことから、交配後代集団内の作出は、おおむね順調に進展しているとした。 ②交配後代集団の形質評価は、計画の通りに進められている。枯死した系統の中には、交配後代集団に着手した平成28年頃から維持し、形質評価を既に数回行った系統も含まれている。この点は非常に残念ではあるが、新たに多くの系統の栽培が順調に進み開花すれば、枯死した系統数を補完できるとと考えている。このことから、概ね順調に進展していると判断した。 ③RAD-Seqジェノタイピングは、一部予定を前倒しし、約100系統のDNA抽出、ライブラリー調整、シークエンスを行った。ハスの葉を試料としたDNA抽出、ライブラリー調整の方法を確立した。この点については、当初の計画より早く進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度研究計画は次の通りである。 ①交配後代集団:交配後代集団内の系統数を増やす予定である。令和元年度に親系統の自家受粉を行い得られた約300粒の種子を栽培する。令和2年度春に播種し、栽培することにより、令和2年度3月末時点までには、既存の系統と新たに栽培する系統の合計で、350~400系統の交配後代集団となることを目標としている。また、良好な栽培環境の下であっても、今後もある一定程度の系統は枯死することが考えられる。その可能性に備え、親系統の自家受粉と種子採取の作業を継続して行い、新たな系統の種子の準備も並行して進める予定である。 ②形質評価:新たな系統についても引き続き令和元年度と同様に開花の有無、開花した系統の花の花色、花弁数、開花日、雄蕊の花弁、葉柄の高さ、葉身の長径と短径、休眠期の地下茎の大きさなどの評価を行う予定である。平成31年度までに形質評価を行った系統についても、再現性を確認するため、継続して形質評価を行う予定である。 ③RAD-Seqジェノタイピング:令和元年度に確立した方法で、DNA抽出用の葉のサンプル回収が可能な健全な系統をすべを用いRAD-Seqジェノタイピングを行う。具体的には、DNA抽出、ライブラリー調整、シークエンス、形質マッピングの順で行う。また、形質評価の結果とRAD-Seqジェノタイピングの結果を用い、今年度は試験的にQTL解析を行うことを目標としている。
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Causes of Carryover |
物品の納期の都合で、次年度使用額(66,266円)が生じた。本使用額については、令和2年度の予算として執行予定である。
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