2020 Fiscal Year Research-status Report
パンコムギの冠水耐性に働く核・細胞質ゲノム間相互作用の解析
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19K15820
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
竹中 祥太朗 龍谷大学, 農学部, 講師 (20757736)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冠水耐性 / オルガネラ / パンコムギ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引続き,パンコムギ(Triticum aestivum)実験標準系統Chinese Spring(以下CS)を核親にした核細胞質置換雑種系統(以下NC雑種系統)から,CSと異なる冠水ストレス耐性レベルを示す系統を対象として,幼苗期に冠水ストレスを与えた個体と冠水ストレスを与えていない条件でそれぞれRNAを抽出してRNA-seq解析を行った。本年度はCSと同等の冠水ストレス耐性を示す系統を解析対象としたのに対して,本年度はCSよりも冠水ストレスに弱いとされているNC雑種系統を対象に解析を進めた。 RNA-seq解析によって得られたシーケンス情報はレファレンスゲノム配列情報にマッピングを行い,昨年度に引続き,95%以上の配列がレファレンスゲノム配列にマッピングできていることを確認した。 冠水ストレスの検定法はこれまでの研究で申請者が採用していた,イネで開発された試験管を用いた方法(Manangkiet et al., 2005, Eupytica 163)で行ったが,非冠水ストレス条件下で水分量が一定になるように排水用にアスピレーターを導入し,確実に排水を行い,マイクロピペットで常に一定量の水分を与えるように生物検定システムを改善した。 また,研究計画に従い,昨年度に収穫した,NBRP・コムギ6倍体コムギコアコレクション系統を対象とした冠水ストレス応答性の生物検定を行った。コアコレクション系統を対象とした生物検定は種子増殖が進んでいる日本由来の系統から行い,日本のパンコムギ系統は比較的冠水ストレスに強い傾向があることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNA-seq解析に用いるCSレファレンスゲノム配列情報にはver.1と改良版のver.2が存在し,ver.2の方が正確性が高いがver.2にはこれまでアノテーション情報が完備されておらず,レファレンスゲノム配列にマッピングされた配列がどのような遺伝子に由来する配列であるのかという情報が得られず、RNA-seqから得られたシーケンス情報の解析を中断していた。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の様にCSレファレンスゲノム配列の不備によりRNA-seq解析で得られたシーケンス情報の発現解析を中断していたが、つい先日にアノテーション情報の付与されたCSレファレンスゲノム配列ver.2.1が公開された(Zhu, T., et al. 2021, The Plant Journal)。今後,この最新のゲノム配列情報に基づく発現解析を再開する予定である。 また,昨年度に増殖が不調であった6倍体コムギコアコレクション系統の種子増殖も順調に進んでいることから,種子が収穫できしだい強制休眠打破を行い残りのコアコレクション系統の生物検定を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
RNA-seq解析の値下げにより予算額と執行額の差が想定以上に出てしまった。追加で解析系統を増やせず,翌年度への繰り越しとなってしまった。 繰り越した助成金は翌年度に追加のRNA-seq解析を行い使用する計画である。
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