2019 Fiscal Year Research-status Report
イネ科葉肉組織の葉緑体配置と二酸化炭素の関係の三次元形態観察による解明
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19K15823
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ科 / 葉緑体 / C4光合成 / 環境ストレス / 形態 / 三次元観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,光合成タイプ(C3・温帯型/寒冷型,C4・NADP-ME型/NAD-ME型/PCK型,等)の異なるイネ科作物を対象に,葉組織の構造を丸ごと三次元情報として取得し,「組織における細胞の位置」,「各細胞の立体形状」,「細胞内における葉緑体の配置」の3点に着目して葉肉組織内に分散している葉緑体の配置を立体的に把握し,特徴ごとに分類をして光合成タイプやその特性との関連を見出すことを目指して取り組んでいる. まず,初年度(2019年度)はウルトラミクロトームで作製した連続切片を光学顕微鏡で順次撮影して再構築する手法を確立し,イネ(C3・温帯型)の葉肉細胞とその葉緑体の細胞内配置について表皮・維管束組織と併せた広域で立体視することを可能にした.同手法を用いてイネ科雑穀シコクビエ(C4・NAD-ME型)の葉肉細胞について,葉緑体が非ストレス環境下で細胞周縁に散在する様子(分散配置)と,ストレス環境下で維管束側に局在する(凝集配置)を三次元再構築し,体積や表面積といった三次元情報に基づいた比較を進めた. また,高精度X線マイクロCT(コンピュータ・トモグラフィー)法を用いた植物葉組織の非破壊三次元再構築法についても,撮影条件と画像解析ソフト上での処理方法の検討を進め,組織・細胞壁・葉緑体の精確な可視化を行えるようになった.本手法を用い,シコクビエ葉組織を三次元観察し,葉肉細胞の葉緑体がストレス条件下で維管束側に集まる様子を組織レベルの広域で解析可能となった. 現在,三次元形態観察は医学・生物学の分野では必須な手法となってきているが,植物学分野においてはまだ報告例が少なく,本研究で取り組んだ上記2つの手法は,個々の細胞や葉緑体の配置までを組織レベルの広範囲で三次元解析することができ,また葉組織のみならず根や茎,花,果実まで幅広く適用可能であり,他研究課題にも応用と普及が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの世界的感染拡大に伴い,海外渡航が制限され,研究協力を頂いている西オーストラリア大学の高精度X線マイクロCTの利用目途が立たない状況になっているため.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立した手法を用い,光強度とCO2濃度を変化させた際の葉組織内の葉緑体の配置および形状の比較解析を行う.既存の光合成測定器を調整・改良し,光および外環境のCO2濃度の制御を次年度内に確立する.また,マイクロマニュピュレータによる維管束側の二酸化炭素(炭酸濃度)のCO2濃度の制御について手法の確立にも着手する.調査対象としては,各光合成タイプにつき2~3種,合計約20種の葉組織の三次元データの収集を目指す.光強度とCO2濃度を変化させた際の葉組織内の葉緑体の配置および形状について各光合成タイプの植物種ごとの比較解析を進め,CO2が葉緑体配置の決定に関わることを裏付ける定量的データを得たい. 新型コロナウィルスの世界的感染拡大に伴い,海外渡航が制限され,研究協力を頂いている西オーストラリア大学の高精度X線マイクロCTの利用目途が立たない状況になっているため,本手法を用いた観察については次年度(2020年度)は見送り,連続切片-光学顕微鏡による手法を主に用いて研究を進め,高精度解析が必要な試料を選抜した上で,最終年度(2021年)にX線マイクロCTによる追補解析に取り組むこととする
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い,年度末に参加予定であった学会の出張(申請者および大学院生2名)が急遽中止となったため.
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Research Products
(14 results)