2019 Fiscal Year Research-status Report
ヤムの巧みな繁殖戦略を紐解く:地上部と地下部の連絡を介した塊茎肥大制御因子の同定
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19K15824
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱岡 範光 九州大学, 農学研究院, 助教 (40778669)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイジョ / 塊茎肥大 / 光環境 / 土壌水分 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイジョの新芋(地下部塊茎)肥大における日長と光質の影響について検討した。人工気象室において、8、10、12、14hの日長条件で栽培し、塊茎肥大を評価した。また、光中断処理として、10h日長下で暗期に1h、赤色光、遠赤色光、白色光のいずれかを照射し、塊茎肥大に関わる光質を検討した。ダイジョ塊茎は、8h、10hの日長において肥大することが確認された。また、遠赤色光下において塊茎が肥大したのに対し、白色光、赤色光下では塊茎肥大が抑制された。したがって、ダイジョは赤色光に応答し、12h未満の短日日長で塊茎肥大を開始することが明らかとなった。これを踏まえ、フィトクロムをはじめとする塊茎肥大関連遺伝子の発現解析を行った。塊茎が肥大する10h日長下の塊茎では、14h日長下のものよりもFLOWERING LOCUS T (FT) ホモログ遺伝子の発現が顕著に高かったことから、ダイジョの塊茎肥大には本遺伝子が関与すると考えられた。 次に、地上部塊茎であるムカゴの形成・肥大機構について日長と土壌水分の面から検討した。個体当たりのムカゴ数は長日よりも短日条件で高い傾向がみられ、特に、短日+半湛水処理によってムカゴの形成が著しく促進されることを見出した。一方、地上部のみを過湿した処理区では、このようなムカゴ数の増加はみられなかった。したがって、ダイジョのムカゴ形成の促進には、地下部の環境(土壌水分)を感知して地上部へ連絡するシグナル因子が関わると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた本年度の研究を実施し、初期目標を満たす知見が得られた。すなわち、新芋肥大については、塊茎肥大を制御する光環境を日長・光質の面から明らかにするとともに、それに関わる候補遺伝子を同定することができた。また、ムカゴ形成を促進させる日長・土壌水分条件を特定できたことから、本現象に作用する地下部由来のシグナル因子の探索を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、ダイジョの新芋肥大およびムカゴ形成を促す環境条件を明確化できたため、次年度も引き続き、それら形質を制御する主要因子の同定を進める。また、シンクロトン光を利用した突然変異系統の作出を行い、ゲノムDNAの候補遺伝子領域に変異がある系統を選抜・評価することで塊茎肥大遺伝子の同定を図る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、当初購入を予定していた分析試薬の納期が遅れたためであり、これについては次年度に購入して解析を進める。
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