2020 Fiscal Year Research-status Report
タマネギの成長相転換を司る植物体の生育ステージと関連遺伝子の解明
Project/Area Number |
19K15828
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
池田 裕樹 宇都宮大学, 農学部, 助教 (90782053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タマネギ / 鱗茎肥大 / 成長相転換 / 生育ステージ / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
タマネギは可食部(鱗茎)の肥大程度が収量に直結するため、栽培地域に最適な品種や栽培時期を選定し、品種のポテンシャルを最大限に発揮できる環境下で栽培することが重要である。そのため鱗茎の肥大メカニズムに基づいて栽培指針を確立することは有意義であるが、鱗茎肥大に関する学術的知見は十分でない。そこで本研究では、鱗茎肥大に関する基礎的な知見を得るため、いくつかの主要品種において鱗茎の肥大開始が可能となる植物体の生育ステージを明らかにするとともに、タマネギが葉身の出葉を停止して鱗茎の肥大成長相に転換するメカニズムを、遺伝子レベルで解き明かすことを目的とした。研究初年度(2019年度)は、早晩性の異なる4品種を秋まき栽培し、生育に伴う鱗茎の大きさ、累計展開葉数と葉面積の変化、および鱗茎肥大に関係するとされているAcFT遺伝子の発現変動などを調査した。その結果、鱗茎の直径、新鮮重および乾物重と葉面積との間には強い正の相関がみられ、鱗茎の肥大には葉面積の確保が重要であることが示唆された。また葉面積と有効積算気温との間にも正の相関、特に早生の品種ほど強い正の相関がみられるなど、秋まき栽培したタマネギの生育に関する新たな知見を得ることができた。さらにAcFT遺伝子の発現を品種間で比較し、秋まき栽培においてもAcFT遺伝子の発現は品種の早晩生と関係していることを明らかにした。2020年度はこれらの研究結果を裏付けるため、生育、りん茎肥大、およびAcFT遺伝子の発現変動について反復調査を行うとともに、これらの関係性について2年間で得られたデータを用いて解明を進めた。また遺伝子の網羅的発現解析(トランスクリプトーム解析)により、鱗茎肥大に関する新規遺伝子の探索を進めた。得られた成果については、園芸学会や学術論文等で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は2019年度に引き続き、複数の栽培品種を対象に、りん茎肥大に関係すると考えられる要因について生育調査を行った。その結果、2019年度に得られた結果を裏付けるデータを得るとともに、植物体の累計展開葉数および葉面積とAcFT遺伝子の発現に強い正の相関が見られることを明らかにするなど、生育および鱗茎肥大と遺伝子発現の新たな関係性を見出した。これらの研究成果については、園芸学会令和3年度春季大会で発表した。また春まき栽培に向けた適品種や播種時期の選定も進め、‘甘70’や‘アドバンス’といった品種を12月下旬に播種すると、肥大程度が良好なタマネギが栃木県で収穫可能なことを示した。さらに予定していたサンプリングが1年早く完了したことから、研究費(基金)の前倒し支払請求を行い、2021年度に実施予定だったトランスクリプトーム解析を行った。このように当初の計画を前倒しして研究を遂行できたことから、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度(2021年度)は、トランスクリプトーム解析で得た遺伝子発現データを用いて、鱗茎肥大に関する新規遺伝子を探索する。また明らかにした候補遺伝子の定量PCRを行うとともに、生育および鱗茎肥大との関連性について紐解いていく。これらの研究を進めることで、タマネギが葉身の出葉を停止して鱗茎肥大に移行する成長相転換において主動的に働く新規遺伝子を明らかにし、本研究の目的を達成する。また得られた成果について、園芸学会や学術論文等で公表していく。
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