2019 Fiscal Year Research-status Report
多汁性と食感が特徴的な水ナスを用いたテクスチャーに関わる遺伝的・物理的要因の研究
Project/Area Number |
19K15838
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
瀬上 修平 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (10781156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナス / 水ナス / 果実形質 / 遺伝学 / テクスチャ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、多汁性で歯切れの良い食感を特徴とする大阪府の特産野菜「水ナス」に注目し、品種育成等に資するため、それら果実特性を決定する遺伝的要因と物理的要因(組織構造、成分組成)を明らかにすることを目的とする。初年度は、大阪府の栽培品種である「泉州絹皮水茄子」、標準的な果実特性をもつ単為結果性品種「AE-P24」、およびそれらの交雑後代F1、F2を材料に、果実形質(多汁性、果肉・果皮の硬さ、比重、含水率)の調査、比較を行った。F2世代は97個体用いた。両親系統およびF1の比較では、含水率を除いた果実形質について両親間で差が見られ、F1の表現型はAE-P24に近い値を示した。F2集団の調査では、多汁性を示さない個体と示す個体の分離比がおよそ3:1となった。その他の果実形質については、連続分布を示した。また、次世代シーケンサーを利用した新規マーカー技術GRAS-Di解析により、両親系統およびF2世代92個体の遺伝子型データを得た。この遺伝子型データと果実調査で得られた表現型データを用いて、各形質について連鎖解析を行った。その結果、含水率を除く各果実形質に関わる単一または複数の遺伝子座を同定した。 一方、多汁性に関わる組織構造の違いを明らかにするため、両親系統とF1個体、一部のF2個体(多汁性の有無で各4個体)について、走査型顕微鏡による果肉の観察を行った。両親系統間や各個体間に細胞の形や密度、並び等の差異が見られたものの、本結果をもって多汁性を左右する特徴として位置づけるには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水ナスの果実特性を決定する遺伝的要因については、多汁性をはじめ、果肉・果皮の硬さ、比重、含水率についての遺伝様式の解明および両親系統間で差が見られなかった含水率を除いた各果実形質に関連する遺伝子座の同定に至った。また、物理的要因のうち、組織構造の解明については、多汁性に関わる明瞭な特徴を見出すことは困難であったが、候補となるいくつかの特徴を観察したため、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝的要因の解明については、計画通りに多汁性を固定した交配後代等を展開、水ナスの食感に関する調査を行う。さらに、初年度で明らかとなった多汁性に関わる遺伝子座について、詳細な解析を進める。 物理的要因の解明については、遺伝解析の結果も鑑みながら、供試材料を精査し、走査型電子顕微鏡による観察および果実の成分分析を実施する。
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