2019 Fiscal Year Research-status Report
昆虫イオノトロピック受容体ファミリーによって仲介される味覚シグナルの解明
Project/Area Number |
19K15848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 悠 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員 (50837474)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオノトロピック受容体 / カイコ / 味覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の味覚は味受容体ファミリーに仲介されると考えられてきた。他方、同じく昆虫化学受容体ファミリーの一つであるイオノトロピック受容体(Ionotropic Receptor, IR)は匂い受容に関係する分子として解析されてきたが、最近になってキイロショウジョウバエでは味覚を仲介するIRが数例報告された。しかしながら昆虫種によって約30-60種からなるIRファミリーの機能の多くは依然として不明である。本研究は、特に味覚に着目してカイコのIRファミリーの機能解析を行い、味受容体とイオノトロピック受容体が担当する味覚シグナルの棲み分けを明らかにすることを目的とする。
29種類あるとされるカイコのIRファミリーのタンパク質コード配列の推定が不完全であったため、まずは先行研究で全長配列が同定されたオオタバコガの配列を参考に、カイコのゲノム配列から全長塩基配列の推定を行った。この配列をもとに味覚器官における発現解析(RT-PCRおよびRNA-seq)を行ったが、両者の結果はあまり合致しなかった。そのため、本来の目的である「味覚器官における主要なIRを見出すこと、IRファミリーの発現レパートリーを明らかにすること」に関しては、シングルセルRNA-seqをもってこれを達成することにした。幼虫の味覚器官の細胞単離の条件検討を行い、酵素反応の適切な条件を設定できたため、シングルセルRNA-seqを実施する見込みが立った。他方、機能解析に関しては、現在、半数以上のIRについてcDNAクローニングを完了し、順次リガンドスクリーニングを実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発現解析から解析すべきIRを絞り込むことはできなかったが、多くの受容体分子についてリガンドスクリーニングが行える段階まで準備が整ったため。またscRNA-seqの準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
リガンドスクリーニングを行い、着目すべきIRが見出された場合にはさらに詳細に解析する。シングルセルRNA-seqによって、味覚神経の一つ一つにおけるIRの発現プロファイルを明らかにする。
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Causes of Carryover |
重要なIRファミリー分子を見出せた場合には抗体やノックアウト系統を作出する予定であったが、それには至らなかったため。次年度に実施のシングルセルRNAseqによってこれは達成される見込みであり、そこで本年度実施予定であった上記の解析に次年度使用額を充てる。
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