2019 Fiscal Year Research-status Report
オオバギ属アリ植物を寄主利用するトビナナフシのアリ防衛打破戦略の解明
Project/Area Number |
19K15849
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 加耶 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (20755681)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アリ植物 / トビナナフシ / アリ防衛機能の低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、東南アジア・ボルネオ島に分布する、オオバギ属のアリ植物種を寄主特異的に利用するトビナナフシの1種Ortomeria cuprinusがなぜアリに排除されることなくアリ植物を利用できるのかを明らかにすることである。 2019年度は、マレーシア・サラワク州森林局からランビルヒルズ国立公園での研究許可を取得し、研究の基盤整備を行った。まず、O. cuprinusによる寄主株選択性を検証するためのナナフシ個体群追跡調査を開始した。同公園内で継続的に調査可能な野外調査ルートを選抜し、ルート上に分布するO. cuprinus寄主オオバギ2種の若木約120株を個体識別しておき、3ヶ月おきに各株の生育状態とアリ防衛強度、O. cuprinus発生消長を記録した。少なくとも3年間はこの調査を継続し、O. cuprinus雌成虫がアリ防衛機能の低下したオオバギ株を寄主として選択するのではなく、ランダムあるいは別の何らかの傾向に沿って選択した寄主株の共生アリコロニーを特殊な行動によって衰弱させ、O. cuprinus幼虫のアリ植物利用を実現している可能性を検証することのできるデータを採集する。その特殊な行動とは、葉柄への加害である。本年度に実施した3回の野外調査では、O. cuprinus幼虫が確認された全ての寄主株に、葉柄の特有な傷があることが確認された。この野外調査のほか、この葉柄加害行動とアリ防衛強度低下の関連性を実験的に検証する準備として、同公園にオオバギ株を栽培する網室を整備した。次年度より、網室内で栽培したオオバギ株にO. cuprinus雌成虫を放飼し、各株のアリコロニーの変化を観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究期間内に行う野外継続調査及び飼育実験の実施体制の構築が主要な要件であった。これについては概ね実行でき、今後の研究体制が整った状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う各国の対策強化により、調査地への渡航が困難な状況が2020年3月より発生し当面続くと見られる。本研究課題は調査地での野外調査継続が必須であることから、渡航できない状態が続くのであれば、実施計画の見直しが必要である。対応策として、予備調査で得られているデータを整理し仮説検証を試みる。
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