2020 Fiscal Year Research-status Report
Dissecting the molecular mechanism of blood sucking behavior of mosquitoes
Project/Area Number |
19K15852
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐久間 知佐子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10747017)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ネッタイシマカ / 吸血 / 味覚 / 遺伝子編集 / 蚊 / 血漿 / 味覚受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
蚊の吸血行動は、感染症の原因となる病原体伝播の根源となる行動である。また数分の吸血行動の前後で蚊が吸血標的に対して誘因と忌避という真逆の行動を示 す点で、神経行動学的に興味深い。吸血前に吸血標的へと蚊が誘引される機構の研究は盛んである一方、血の味覚受容による吸血開始・吸血飽和状態の感知・吸 血停止に関しての研究は遅れており、分子基盤の解明が求められている。本研究ではこれら吸血行動の分子基盤の解明を目指した。 2020年度は昨年度に見出した吸血抑制活性を持つ血漿因子の同定を目指した。親水性物質であることが推測されていたため、親水性分子の分離に優れたHILICカラムを用いたHPLC分画を行い、吸血抑制効果を持つ画分を絞り込んだ。さらにLC-MS/MSによって活性成分の構造式を同定した。この分子は様々な動物種で保存されている分子であることが明らかになった。 また、非吸血性のオス蚊に比べ、メス蚊の口吻先端で発現が顕著に高いことが報告されていた味覚受容体、Gr5に関して、昨年度新たな機能欠損ネッタイシマカの作製に成功していたため、この変異体の行動解析を詳細に遂行した。Gr5変異体は、宿主への誘引においては異常を示さず、その後の吸血に異常をきたすことが明らかとなった。Gr5変異体では吸血量や吸血率が減少していた。蚊が膜に口針を差し込んで吸血促進因子であるATPを取り込む様子を高解像度でイメージングしたところ、Gr5変異体では、膜の中に口針を挿入している時間が顕著に長くなっていた。一部の個体は膜の中で口針を揺らすのみで吸血を行わず、その他の個体は吸血を行うものの吸血に要する時間が長くなっていた。以上より、Gr5は吸血促進シグナルであるATPを受容する機構に貢献していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸血抑制効果を持つ血漿因子の探索に関しては、HPLC分画で活性画分を絞り込んだ後の、構造式を決定する過程が非常に難しいことが予想されたが、予想外に順調に同定作業を進めることができ、既知因子であることを発見できた。 Gr5変異体に関しても、口針の微細イメージングを行う実験系を確立することができたため、吸血異常について詳細に解析することができた。 以上より、概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
血漿内の吸血抑制因子に関しては、活性分子の実体を同定することができたため、今後、この分子の機能、動態、種間の保存性など、様々な角度から吸血抑制に関しての解析を進めることを目指す。具体的には、様々な動物種の相同体を合成し、吸血抑制能の保存性を検討することや、蚊の体内におけるこの分子の濃度算出を行う。 Gr5に関しては、吸血促進シグナルであるATPの受容体候補として考えられるため、Gr5発現神経の可視化や人為的活性化を目指す。また、味覚受容体は複数の味覚受容体が同じ神経に発現して協調的に働くことが一般的であり、吸血に他の味覚受容体も寄与する可能性が示唆される予備データを得たため、他味覚受容体の寄与に関しても変異体を作製し、その吸血への貢献度を評価する。
|
Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。またオンサイトでの参加を予定していた学会がオンラインに変更されたため、旅費などで未使用額がさらに生じた。 2020年度に吸血を正に制御する味覚受容体としてGr5の機能解析を進めたところ、同様の働きをする可能性のある他味覚受容体も解析対象に含めることで研究が更に推進することが判明した。これら追加遺伝子の変異体作製などを2021年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
|
Research Products
(3 results)