2019 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスベクターを用いたマツ材線虫病の分子機構の解明
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19K15853
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
新屋 良治 明治大学, 農学部, 専任講師 (30802798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マツノザイセンチュウ / マツ / ウイルスベクター / 病原性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
マツノザイセンチュウ(以下、線虫)を病原体とするマツ材線虫病は、マツ類樹木に枯死を引き起こす深刻な樹木病害であり、防御応答の過剰誘導により樹木全体が枯死すると考えられている。分子生物学的技術を使った大規模な研究により、線虫病原因子の候補が徐々に明らかとなってきているが、分子機能解析手法の不足により病原因子の特定には未だ至っていない。私たちの研究チームは昨年度までに、モデル植物であるべンサミアナタバコにおいて線虫分泌タンパク質の一過性発現を行い、過敏感細胞死を誘導する線虫由来の5種類の病原候補タンパク質を見出した。本研究で取り組む課題は、これらの病原候補タンパク質が実際の宿主であるマツでの発病に関与するかを検証することである。そこで初年度は、木本類への外来遺伝子発現を可能にするALSV (Apple latent spherical virus)べクターを利用して、線虫由来の病原候補タンパク質をクロマツ種子の胚に一過的に発現させる系を確立するとともに、宿主マツに抵抗性反応を誘導しうるかを検証した。まず、線虫病原候補因子の完全長cDNA配列をALSVに組み込み、パーティクルガン法によりクロマツ種子胚へ接種した。GFPを用いた実験系により、目的外来タンパク質をクロマツ胚で発現できていることが確認できた。次に、マツの抵抗性反応を評価するために、クロマツ種子胚に線虫を接種した際に発現が上昇する PR 遺伝子をマーカー遺伝子として選抜した。その結果PR2, PR4, PR5, PR6が本試験で使用できることが確認できた。現在は、線虫タンパク質を発現させた際のPR遺伝子応答を時系列的に調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度にALSVを用いて、クロマツに線虫タンパク質を発現させることに成功し、マツ防御応答誘導活性を評価する実験系を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、線虫タンパク質を発現させた際のPR遺伝子応答を時系列的に調査している。本実験により、クロマツに防御応答を誘導する線虫由来の分子を特定する。その後は免疫沈降法により、ターゲットとなるクロマツ分子の同定を試みる。
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