2021 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスベクターを用いたマツ材線虫病の分子機構の解明
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19K15853
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
新屋 良治 明治大学, 農学部, 専任准教授 (30802798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マツノザイセンチュウ / ウイルス / クロマツ |
Outline of Annual Research Achievements |
マツノザイセンチュウ(以下、線虫)を病原体とするマツ材線虫病は、マツ類樹木に枯死を引き起こす深刻な樹木病害であり、防御応答の過剰誘導により樹木全体 が枯死すると考えられている。分子生物学的技術を使った大規模な研究により、線虫病原因子の候補が徐々に明らかとなってきているが、分子機能解析手法の不 足により病原因子の特定には未だ至っていない。私たちの研究チームは初年度に、木本類への外来遺伝子発現を可能にするALSV (Apple latent spherical virus)べクターを利用して、線虫由来の病原候補タンパク質をクロマツ種子の胚に一過的に発現させる系を確立した。2年度目は、クロマツ種子胚に線虫を直接 接種した際のPR遺伝子の応答を調査した。2020年度に得られた結果では、サンプル間の遺伝子発現量の差が大きくその後の実験を継続することは難しいと判断した。そこで2021年度は、ウイルス感染量を基準として、マツPR遺伝子の発現量をノーマライズすることを試みた。その結果、懸念であったサンプル間の遺伝子発現量の差を小さくすることに成功し、マツノザイセンチュウが分泌するソーマチン様タンパク質及びGH30が、マツ種子胚に対して顕著に防御応答を誘導することを明らかにした。マツ種子胚を用いたスクリーニングにおいて、従来から用いられてきたベンサミアナタバコを用いた場合と異なる結果となった分子が見られた。マツノザイセンチュウの本来の宿主であるマツにおいて外来タンパク質を発現させることが可能な本手法は今後マツノザイセンチュウ病原性因子の機能解析研究を大きく加速させる可能性がある。得られた成果は原著論文としてFrontiers in Plant Science誌に投稿し、2022年度に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、初年度、2年度目の進捗が遅れた。しかしながら、提案研究の肝となる技術の開発には成功し、すでに論文として発表したことから、まず1つの大きな目的は達成できた。今後は、確立した手法を用いて、引き続き研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、マツノザイセンチュウの病原性因子受容体の探索を行う。本実験では酵母ツーハイブリッド (Y2H) 法とプルダウン法を用いる。
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Causes of Carryover |
研究期間の内、初年度と2年度目において新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、共同研究者が所属する機関に赴いてパーティクルガン装置を用いた実験を行うことができなかった。そのため、本研究計画における最重要ポイントである、ALSVを用いたマツ種子胚外来遺伝子発現手法の確立が当初の予定より遅れた。また、線虫タンパク質を発現させ、マツPR遺伝子の定量を行った際には、当初の予定よりも遥かに個体間の差異が大きかった。この問題を解決するために時間を要した。次年度は、当初の予定通り、確立した手法を用いてマツノザイセンチュウ病原性因子の受容体の特定を目指し実験に取り組む。
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