2019 Fiscal Year Research-status Report
集水域森林においてシカ害が生じた河川における環境影響評価手法の開発
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19K15857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 光 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特定助教 (00724030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シカ食害 / 環境DNA / 河川生態系 / 集水域 / 魚類 / 水生昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
シカの個体数増加による森林生態系への悪影響が日本全国において問題となっている。特に下層植生の衰退は土壌浸食を促進し、土砂流入の増加や水質の改変など、隣接する河川生態系にも影響が拡がるとされる。しかし、集水域森林においてシカ害が生じた河川生態系において、その影響を検討した研究は少なく、なにを、どのように調べれば適切な影響評価が行えるのかという手法の確立にも至っていない。様々な要因が同時に影響しうる河川生態系において、集水域で生じたシカ害の影響を検証するため、本申請ではシカ害以外の要因も考慮した多地点比較によるアプローチを提案する。申請者らがこれまで行なってきた生態系モニタリングをより効率的に多地点調査へと発展させるため、GISを用いた調査地点選定の自動化および環境DNAメタバーコーディングによる生物観測を導入する。本研究により、シカ害の影響について多地点における迅速な河川生態系への環境影響評価の実施が可能となる。 2019年度は、京都大学芦生研究林における環境DNAメタバーコーディングの性能評価のための魚類、水生昆虫およびシカを対象とする採集および野外観察を行った。魚類および水生昆虫については、シカの排除区とコントロール区でそれぞれ、5, 7, 9, 11月に除去法またはコドラート法による種組成および生息密度調査を行った。魚類の種組成や生息密度は調査区ごとに異なる傾向が季節を通じて見られたが、シカの排除との明瞭な関連は認められなかった。水生昆虫は季節による種組成および個体数の変化が顕著であったが、シカの排除との明瞭な関連は認められなかった。野外観察と並行して、月に2回の頻度で環境DNAの採集を行った。現在、12月までのサンプルについては抽出作業が終了し、リアルタイムPCRによるシカのDNA検出については分析中、魚類と水生昆虫の分析については2020年度早々に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環境DNAおよび魚類と水生昆虫の採集および野外観察はおおよそ予定通り実施することができた。一方で水生昆虫群集の種組成および生息密度の分析と環境DNAの分析は2019年度内に大半を終了する予定であったが、実験室作業および外注先での分析に当初の想定以上に時間がかかったため、やや遅れている。近畿圏全域を対象とした広域調査については、年度前半にはGISを用いた予備的な解析を終了していたが、集水域の分析に関して新たなツールが近年公表され(OCNet, bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.17.948851)、国土交通省の提供する集水域データを用いるよりも高精度の分析ができる可能性が出てきたため、現在新しい方法による再解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
京都大学芦生研究林での各種採集と野外観察は5月の回で終了する。環境DNA分析については、すでに魚類と水生昆虫の種組成および生息密度のデータが出ているものについて、少数のサンプルを先行して分析し、環境DNAのリード数と従来手法による観察結果の対応が良いものについて、優先して分析を進める。広域調査については年度前半に調査候補地を決定し、8月、9月に環境DNAの採集を行い、10月以降、分析と結果の解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)