2019 Fiscal Year Research-status Report
域内保全に向けたゲノムワイド・エピゲノム解析による希少動物の遺伝管理方法の確立
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19K15861
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Research Institution | Kyoto City Zoo |
Principal Investigator |
伊藤 英之 京都市動物園, 生き物・学び・研究センター, 研究教育係長(獣医師) (10779648)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 希少動物 / ゲノムワイド / エピゲノム / 個体群管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物園は生息域外保全の重要な拠点である。動物園における生息域外保全では家系情報をもとに個体群の遺伝的管理がされているが、家系情報のみでなく分子遺伝学的情報との統合が重要である。また、有害形質の回避や飼育環境への適応の回避など取り組むべき課題は多い。本研究では、希少動物を対象に、ゲノムワイド解析を実施し、数万単位の遺伝子多型の検出を行い、遺伝子解析と従来の家系解析との統合モデルの確立、有害形質・適応関連遺伝子特定を目指す。 国内希少動物であるツシマヤマネコの野生個体を対象に、マイクロサテライト解析とゲノムワイド解析の一つであるGenotyping by Random Amplicon Sequencing-Direct(Gras-di解析)を実施した。ベンガルヤマネコの韓国集団の個体から作製されたマイクロサテライトマーカを用いて、ツシマヤマネコの遺伝的多様性解析を行った結果、ツシマヤマネコは韓国集団と比較して著しく低い遺伝的多様性しか有していなかった。Structure解析及び主座標分析(Principal Coordinate Analysis; PCoA)の結果、韓国集団とは遺伝的分化が認められた。Gras-di解析については、現在解析中である。また、2018年にDNAデータベースに登録したツシマヤマネコのドラフトゲノムの精度向上のために、次世代シークエンスを追加で実施し、詳細なゲノム情報の解析を行っている。 フンボルトペンギンについて、次世代シークエンスを実施し、ドラフトゲノムを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他の研究機関や環境省との連携ができ、おおむね順調に進展している。また、多研究機関との連携により、検体数の確保、遺伝子解析量の増加、バイオインフォマティクス解析の迅速化など、想定以上に進捗が進んだ面もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子実験が実施できない期間が不明であるが、実施不可期間については、これまでに得られた遺伝子情報についてデータ解析を行う。また、当初予定した学会が中止となったため、他の学会での発表を検討する。その他については研究計画を変更しなければならないような問題点はとくになく、これまでの研究方針を継続させる。 ツシマヤマネコにおいては、飼育個体のゲノムワイド解析も実施し、野生個体との比較を行う。またより詳細なドラフトゲノムを作成し、さらに複数個体のゲノム解析を実施することにより、SNP情報を整備する。得られた情報をもとに、個体群管理において、適切な遺伝的管理方法を策定する。 フンボルトペンギンについて、ドラフトゲノムを作成する。複数個体を対象に全ゲノムバイサルファイトシーケンスを行い、エピゲノム情報の整備を行い、エピゲノム情報を用いた年齢推定法の開発を試みる。
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