2023 Fiscal Year Annual Research Report
Foodshed概念を用いた都市空間の再評価と計画論への展開
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19K15863
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯田 晶子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (90700930)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フードシステム / 都市農業 / 緑農住 / Foodshed / 堆肥 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、都市農業による生産ー流通ー消費ー破棄ー資源再利用といった一連のフードシステムのうち、特に「廃棄ー資源の再利用」に焦点をあてた研究を行なった。具体的には、東京都の緑農住混在市街地を対象に、江戸から続く伝統的な資源利用方法である緑色廃棄物(特に落ち葉と食品廃棄物)の堆肥利用が、現在どれほど残っているか、また何故残っているか、練馬区の都市農家へのアンケート調査とインタビュー調査より明らかとした。結果として、練馬区の農家の約3分の1が、土壌の質の向上のため、現在も堆肥を自家生産していることが明らかとなった。落ち葉等は、農家自身が所有する屋敷林や雑木林からだけでなく、数km以内にある公園・神社・学校等からも集められていた。また、落ち葉や食品廃棄物を使った堆肥の生産システムは、廃棄物の削減、都市の循環性の向上など、都市環境の持続可能性を高め得るが、都市農家はそうした環境的な理由よりも、むしろ経済的な理由によって動機づけられていることがわかった。研究の成果は、国際誌Urban Forestry & Urban Greeningで発表した。
研究期間全体を通じては、フードシステムを「生産ー流通ー消費」と「破棄ー資源再利用」の2つに分け、それぞれに東京都の緑農住混在市街地におけるFoodshed(生産地から消費地まで食料が移動する地理的な範囲)の可視化を行なった。緑農住混在市街地では、緑地、農地、住宅地がモザイク状に混在しているが故に、数mから数kmの小規模なフードシステムが長期にわたり成立しており、環境の持続可能性に寄与し得ることがわかった。一方で、本研究では、そうしたフードシステムによる環境負荷の低減の効果(例えば、二酸化炭素排出量の削減)については定量的な算定を行なっておらず、今後の研究課題である。
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Research Products
(5 results)