2021 Fiscal Year Research-status Report
スギの環境適応における時計遺伝子の役割の解明: 網羅的遺伝子発現解析を用いて
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19K15876
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
能勢 美峰 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (20582753)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時計遺伝子 / フェノロジー / 遺伝子組換 / トランスクリプトーム / 環境適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
日々刻々と変化する周囲の環境に適応するため、スギの遺伝子発現は日周性および年周性を刻んでいる。その制御において中心的な役割を果たしていると推定されるのが時計遺伝子である。時計遺伝子は、その機能の重要性からヒトをはじめとして様々な生物種で数多く報告されている。植物では、シロイヌナズナをはじめとする被子植物の時計遺伝子については多くの研究報告がある。樹木ではポプラにおける時計遺伝子の機能解析が進んでおり、遺伝子組換実験(発現抑制)から開葉や耐凍性などフェノロジーに関連した形質に影響することが明らかにされている。しかし、針葉樹を含む裸子植物の時計遺伝子は近年ようやく注目され始め、針葉樹のもつ特異性が明らかになってきている。中でもスギは中世代に起源をもつ原始的な種であることから、時計遺伝子の進化の過程を知る上でもスギにおける時計遺伝子の研究は学術的に大変興味深い。 本研究では、スギの時計遺伝子を高発現させた組換え体を作製し、伸長成長のフェノロジー(季節性)が野生株とは異なることを発見した。本年度は、時計遺伝子が日周性・年周性に与える影響、及び、時計遺伝子が制御するフェノロジー形質との関係を発現遺伝子から解明するため、年間を通じて採取した組換体と野生株サンプルのRNAを用いて次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析に着手し、一部解析したデータから興味深い結果が得られていることから、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究において、次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行うサンプル数をさらに増やしてデータ解析を行うことで、時計遺伝子が制御する遺伝子群を明らかにし、スギにおけるフェノロジーの制御メカニズムについて考察を行う。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンス解析にかかる費用が当初の見込み額よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は次年度使用額を合わせて使用することで、より多くのサンプルを解析することで、より信頼性のあるデータを得られると考える。
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