2020 Fiscal Year Research-status Report
Control of Monochamus alternatus by transferring Bursaphelenchus doui and B. luxuriosae, closely related species of B. xylophilus as the phoretic symbiont
Project/Area Number |
19K15877
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小澤 壮太 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10753139)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マツノザイセンチュウ近縁種 / 便乗型成虫 / マツノマダラカミキリ |
Outline of Annual Research Achievements |
マツ材線虫病の病原体マツノザイセンチュウBursaphelenchus xylophilusは分散型4期幼虫という便乗に特化した発育ステージで媒介昆虫であるマツノマダラカミキリに運ばれる。これに対し、マツノザイセンチュウ近縁種の中には、分散型4期幼虫ではなく寄生型成虫という発育ステージでカミキリムシに運ばれるものがあることが報告されている。しかし、寄生型成虫の生態や生活環における位置づけなどは解明されていない。もし寄生型成虫がカミキリムシへの寄生能力をもち、生存や繁殖に影響を及ぼすならば、媒介昆虫の駆除、ひいてはマツ材線虫病の防除にもつながる。本研究では、マツノザイセンチュウ近縁種2種の寄生型成虫の寄生生態を解明するとともに、本来の媒介昆虫ではないマツノマダラカミキリに寄生型成虫を保持させた際に与える影響を調べることで、防除素材としての有効性を評価する。 昨年度の成果により、マツノザイセンチュウ近縁種B. douiおよびB. luxuriosaeがそれぞれの本来の媒介昆虫に対し、寄生ではなく便乗関係にあることが明らかになった。一方、寄生型成虫の名称についても、浴野ら(2017)による外部形態等の観察に基づき、神崎ら(2019)により便乗型成虫へと変更された。しかし、本来の媒介昆虫ではないマツノマダラカミキリに便乗型成虫が導入された際にどのようなことが起こるのかはわかっておらず、侵入部位の錯位により生存や繁殖に影響を及ぼす可能性も想定された。 そこで今年度は、B. douiとB. luxuriosae、さらにマツノザイセンチュウをマツノマダラカミキリ19頭、17頭、16頭に実験条件下で保持させて、便乗型成虫のカミキリムシへの侵入部位を調べた。その結果、便乗型成虫はカミキリムシの血体腔や生殖器官には侵入しておらず、生存や繁殖に影響するような明瞭な効果は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マツノザイセンチュウ近縁種Bursaphelenchus douiおよびB. luxuriosaeを本来の媒介昆虫ではないマツノマダラカミキリに実験条件下で保持させた際の侵入部位や生存に対する影響を調べることを予定していた。これらの項目については計画通り遂行できたため、研究はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、令和2年度までに防除素材候補として選抜されたマツノザイセンチュウ近縁種の線虫をマツノマダラカミキリに導入し、不妊化等の観点から防除素材として優れた線虫種を決定することを予定していた。しかし、防除素材候補として検討していたマツノザイセンチュウ近縁種の便乗型成虫はマツノマダラカミキリの血体腔や生殖器官には侵入せず、たとえ線虫を導入しても不妊化等の効果を評価することは困難であると考えられた。一方、今年度までの研究でB. luxuriosaeの便乗型成虫の生態的な特徴として便乗形態でありながら増殖能力を有することが明らかになっている。そこで、センノカミキリ-B. luxuriosaeの系をモデルに便乗型成虫の産卵や脱皮に関わる要因を明らかにして、線虫の生活環における便乗型成虫の位置づけや生態を解明することに研究計画を変更する。
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Causes of Carryover |
(繰り越し理由)新型コロナウイルス感染拡大のため、成果公表のため参加を予定していた日本森林学会(3月、東京)がオンライン開催となり、これに係る旅費が未使用となったため。 (使用計画)カミキリムシの飼育および線虫の培養のための資材が不足してきているため、その購入費に充てる。
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