2019 Fiscal Year Research-status Report
新規in vitro針葉樹仮道管分化誘導系の開発による細胞壁形成過程の解析
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19K15882
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二次木部細胞 / 仮道管 / 管状要素 / 細胞骨格 / 針葉樹 / ヨーロッパトウヒ / 植物組織培養 / オーキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
針葉樹の樹幹の90%以上は仮道管とよばれる二次木部細胞が占め、仮道管の形態や細胞壁構造が針葉樹材の材質に大きく影響する。しかしながら、資源利用上の重要性にもかかわらず、仮道管の細胞壁形成機構は十分に明らかになっていない。細胞壁形成過程を詳細に解析するモデルとして、培養環境下で植物細胞を道管要素や仮道管へと分化誘導するin vitro誘導系が開発・利用されるが、誘導率や誘導される細胞の微細構造などに課題がある。本研究では、針葉樹であるヨーロッパトウヒ(Picea abies)培養細胞から仮道管を直接分化誘導する新たな誘導系を開発し、仮道管細胞壁の形成過程を解析する。さらに、針葉樹培養細胞への蛍光タンパク遺伝子の導入を行い、細胞壁の堆積制御に関わるとされる細胞骨格の挙動の動的解析を行う。 本年度はヨーロッパトウヒ培養細胞の培養条件の検討と、培養細胞への蛍光タンパク遺伝子の導入による細胞骨格の可視化に取り組んだ。ヨーロッパトウヒの成熟胚から誘導された培養細胞において、二次壁が局所的に肥厚した仮道管様の細胞が観察された。この仮道管様の細胞にはヨーロッパトウヒの仮道管のもつ有縁壁孔に非常に類似した構造が観察された。また、そのような有縁壁孔様の構造は隣接する細胞間で形成位置が一致しており、これは有縁壁孔対と呼ばれる仮道管間の連絡構造に類似していた。 この培養細胞の長期維持を当初誘導された培地上で行うと、褐変が発生し増殖が不安定になるという課題があったが、培地に添加する植物ホルモンの種類や濃度の再検討によって、褐変の発生頻度を抑えることに成功した。また、固体培地上で誘導された培養細胞を液体培地に移すことで、より細胞ごとの性状が均質化された懸濁細胞の獲得にも成功した。 一方で、培養細胞への蛍光タンパク遺伝子の導入については、導入実験を複数回行ったが、現在までに形質転換細胞の獲得には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
仮道管様の細胞を含むヨーロッパトウヒの培養細胞について、その安定的な維持増殖と懸濁培養を行う手法が明らかになったことから、針葉樹培養細胞内で細胞壁の形成過程を観察する体制が整ってきたと言える。一方で、形成過程において細胞壁の堆積制御に関わるとされる細胞骨格を解析するための蛍光タンパク遺伝子の導入に至らなかったことから(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞への蛍光タンパク遺伝子の導入を達成するため、ヨーロッパトウヒ培養細胞とアグロバクテリウム菌液との共存培養による遺伝子導入を引き続き実施する。共存培養の期間や、培養温度などの再検討を行う。また、ヨーロッパトウヒ培養細胞について、仮道管様の細胞の分化過程の解析をより効率的に行うため、培養条件の変更による仮道管様の細胞の誘導率の向上を図る。
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Causes of Carryover |
物品購入後、小額の残金が生じたため。次年度以降、薬品などの消耗品の購入に組み込んでの使用を計画している。
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Research Products
(2 results)