2019 Fiscal Year Research-status Report
Functional and mechanical analysis of cross-linked structure formed by xyloglucan endotransglucosylase/hydrolase
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19K15884
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
砂川 直輝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (90839044)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞壁 / キシログルカン / セルロース / 加水分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では環境問題や気候変動等への国際的意識の高まりに対する対応としてより環境負荷の少ないバイオマス由来材料を創生すべく、植物体を形成する成分として代表的なセルロースとキシログルカンを互いに架橋することが出来る酵素キシログルカンエンドトランスグルコシダーゼ(以下、XTH)に着目し、多様なXTHの機能解析と、XTHによって架橋反応が行われたバイオマス材料の物理特性の理解を目的としている。 本年度は反応材料の物理特性の解析に必要となる大量のXTH酵素の取得を目指し、主に酵母Pichia pastoris(以下、P. pastoris)を主体とした組換え酵素発現系の構築を試みた。シロイヌナズナ、ポプラ由来のXTH酵素に対して、発現の促進が報告されているタグタンパク質との融合タンパク質化を含む発現コンストラクトの検討や培養条件の検討を行ったが培養液当たりの酵素生産量の向上効果はあまり得られなかった。そこで横河電機株式会社との共同により、プログラム制御によりP. pastorisのファーメンター培養を自動化する装置の開発を実施した。新規に開発した培養装置を用いる事により、これまで1人の作業員が1週間付ききりで行う必要が有った培養作業が、培養立ち上げと終了時処理作業のみで自動化できるようになり組換えXTH酵素を含む培養液取得に向けたスループットが大幅に改善した。 これにより仮に培養液当たりの酵素生産量を十分に得る事が出来ない場合でも、大量の培養液量を用意する事で必要な酵素量を得る事が出来るようになった。よって、当初の研究目標は達成されたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は反応材料の物理特性の解析に必要となる大量のXTH酵素の取得を目指し、組換えXTH酵素取得に向けた基盤の確立を目的として計画していた。 目標の達成に向け、当初は組換え酵素発現系における培養条件の検討および遺伝子コンストラクトの検討により十分量の酵素を取得する計画であった。しかしながら、前述の検討によって目的とするXTH酵素の生産量を高める事は出来なかった。これはXTH酵素が一般的に組換え発現が難しいとされる植物由来の酵素である事に起因していると考えられるが、本検討を通じて何故生産量を高めることが出来ないのか、およびその解決策まで到達する事は出来なかった。そこで仮に培養液当たりの酵素生産量が少なくとも十分な培養液量を確保する事が出来れば当初目標を達成可能であると考えた。 このような目的の達成には一般的にファーメンター装置を用いた大量培養技術の利用が行われる。しかしながら、本研究では同時に多種の酵素の利用を想定している為、従来型のファーメンター装置の利用では培養期間だけで多くの時間を消費する事になり、目標の達成が困難になる事が予想された。そこで新たにプログラム制御技術を用いたファーメンター培養技術の自動化に取り組み、これを達成した。 この技術を用いる事により多種の酵素を大量に、省人的に得る事が可能になったことから、当初目的としていた組換えXTH酵素取得に向けた基盤の確立は達成されたと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討を通じXTH酵素の取得へ向けた見通しが得られたことから、当初計画の通り本年度は各XTH酵素に対して精製酵素の取得を行い、各酵素の酵素学的なパラメータを取りそろえる検討を進める。同時に、セルロースとキシログルカン試薬を用いた人工細胞壁モデルの検証を進める。 酵素学的な検討では特に各XTH酵素が持つ分解方向への酵素活性と合成方向への酵素活性を比較可能な形で取りそろえる事を目標とする。本検討を通じ、これにより植物が部位、時期特異的に発現をコントロールし使い分けを行っているXTH酵素それぞれがどのような基質特異性、機能を有しているかを明らかにする。 人工細胞壁モデルの構築では結晶型・結晶化度・由来等を変えたセルロース繊維と分子量等を変えたキシログルカンを組み合わせる事で疑似細胞壁環境を構築し、これに調製したXTHを加える事で植物内でのXTH反応環境を模式的に再現する。反応により生じた物理的特性変化は、粘度の測定、乾燥物の引張強度測定、などの物理的試験と、反応後のキシログルカン分子量の変化測定、構成糖分析等の化学分析を組み合わせる事により行う。上記の測定により、実際に物理強度等の変化が観測されたサンプルについては実際に架橋構造が生じているかどうかを電子顕微鏡や高速AFM、NMRなどを用いた観察により解析する。
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Causes of Carryover |
当初計画では国際学会での発表が想定されていた為、旅費予算を計上していたが招待講演となった事により当該予算項目の支出が減少した。また物品費については使用物品が共通する他の予算から支出していた為、本研究費からの支出が当初予定より減少した。 本年度は共用する消耗品費を本研究予算の物品費より支出する事と、遺伝子実験関連サンプルの外注に伴う支出が増えることが想定される事から、次年度使用額をこれに充てる予定である。
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