2021 Fiscal Year Research-status Report
Experimental investigation of the effects of phytoplankton diversity on ecosystem functioning in the ocean
Project/Area Number |
19K15895
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 助教 (80795055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 植物プランクトン / 生物多様性 / 共起ネットワーク / 生態系機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋植物プランクトンは、形態や生理機能が異なる多様な種が同一環境に共存することで、高い多様性を維持している。しかし、この多種共存が生態系に対しどのような意味を持つのかについては知見が乏しい。本研究は、植物プランクトンの多種共存が群集の多機能性と生産力に与える効果を定量化し、多様性の生態学的意義を明らかにすることを目的とする。過去の観測で得られた群集データをもとに合理的な疑似群集を設計し、培養実験によって人為的に多様性を創出することでその定量化を試みる。 2021年度は、2020年度に実施した培養実験の資料分析(POC/PON、DOC)を完遂した。RNA-seqに関しては、2020年度に分析した試料を用いて予備的な分析と解析パイプラインの構築を行った。また、実験区間の検定を可能にするため、追加でRNA-seqの外注分析を行った。これらの結果を解析し、植物プランクトンの共存が各個体群の増殖速度、栄養塩利用効率、生態化学量論に与える影響を明らかにした。さらに、遺伝子転写活性を見積もることで、環境変化に応答を示した遺伝子とその機能を推定した。 また、前年度に構築した解析パイプラインを用いて、日本沿岸域、北極海および黒潮域の微生物群集に対する共起ネットワーク解析を実施した。特に黒潮域から採取したDNAサンプルを用いては、植物プランクトン由来18S rDNA遺伝子の定量PCRおよびメタバーコーディングを行い、植物プランクトン指標遺伝子の絶対量頻度データを構築した。その結果、絶対存在量に基づく共起ネットワーク解析が、海域起源の異なる群集や共存傾向の強い植物プランクトンを推定するのに有用であることを明らかにした。これらの成果を論文にまとめ、1本は国際学術誌Limnology & Oceanographyに掲載、もう1本は投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、計画していた化学パラメータの分析を全て完遂した。また、それらを用いた解析も進めている。同プロジェクトに関して、研究論文3本の執筆を執筆した(そのうち2本は国際誌に受理、1本は査読中)。一方で、当初の計画にはなかった新たなRNA-seq試料の分析も行ったこともあり、2020年度の培養実験の結果については一部の解析と論文執筆がまだ途中である。以上の結果を踏まえ、本研究は概ね順調に進展していると判断した。また、当研究の最終年度を2022年に延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養実験で観察された植物プランクトンの「多様性効果」を、生理応答、機能発現、および生元素循環の観点から総合的に考察し、論文化までを行う。また、ゲノムDNA配列や転写プロファイルなどの一次情報はGenBank等の公共データベースを介して公表する。
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Causes of Carryover |
一部のサンプルで追加の受注分析が生じたことなどから、年度内に一部の解析と論文執筆を完遂することができなかった。そのため、新たに執筆する論文の掲載費を翌年度分として請求した。
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