2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of light wavelength and intensity on the larval attachment behavior of marine sessile organisms
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19K15897
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金 禧珍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (10823437)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 付着動物 / 付着期幼生 / 付着行動 / 走光性 / 光波長 / 放射照度 |
Outline of Annual Research Achievements |
付着動物の多くは付着期になると光受容体である眼点を持つ。この生物学的特徴に着目し、光環境が付着期幼生の行動に与える影響を調べた。日本の沿岸域に分布する、シロスジフジツボ、マガキ、ムラサキイガイの3種の付着動物を対象に、(1)眼点が有する視色素の吸光度を400~750 nmの間で測定し、認識可能な光波長の範囲を分析し、(2)異なる光環境下で示す各幼生の走光性と付着行動を求めた。この時、光環境は、眼点色素の吸光度を基に、近紫外線(ピーク波長375 nm)、青(470 nm)、白(460と570 nm)、緑(525 nm)、赤(660 nm)、近赤外線(735 nm)の6色のLEDsを3つの強さ(5、15、25W/m2、ただし、近赤外線の場合は25、50、100 lux)に調節し、計18区(実験区)に設定した。それぞれの光環境下で幼生が示す行動のパターンを暗黒下の対照区と比較し、幼生の光反応を定義した。フジツボ類の場合、ノープリウスIからV期までの幼生は単眼のみを、ノープリウスVI期から付着期のキプリス幼生は単眼と共に2つの複眼を持つため、孵出直後のノープリウス幼生I期とII期、ノープリウス幼生Ⅵ期、キプリス幼生の3つの成長段階のグループを対象に、それぞれの眼点の吸光度と各成長段階の幼生が示す走光性およびキプリス幼生の付着行動を観察した。眼点の吸光度と光反応の結果を解析することにより、フジツボ類の幼生分散を介した分布拡大における光の役割を解釈した。二枚貝類である、マガキとムラサキイガイの付着期に出現する眼点については、光波長による吸光度のパターンは類似していたが、付着行動は両者の間で異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、計画していた研究対象生物である、フジツボ類(シロスジフジツボ)とマガキに加えて、ムラサキイガイについても幼生が持つ眼点の特徴と繋げて、光反応(走光性と付着行動)に対する光環境の影響を検討することができた。これらのことから、令和元年度はおおむね順調に進展していると判断される。フジツボに関しては、令和元年度の計画の対象であった付着期幼生の光反応のみならず、ノープリウス幼生の走光性についても調べることが出来た。マガキ幼生の付着行動に与える光波長と放射照度の影響を検討した研究結果は、令和2年10月開催予定だった(コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年9月に延期)国際学会World Fisheries Congressに「Effects of light wavelengths and intensities on larval settlement in the Pacific oyster Crassostrea gigas」の題目で要旨を提出している。ムラサキイガイの付着期幼生を用いた研究では、眼点の吸光度及び走光性と付着行動に与える光波長と放射照度の影響を見出し、令和2年度日本水産学会春季大会英語セッションにおいて「Larval settlement of the mussel Mytilus galloprovincialis under different light conditions」の題目で発表を行った。また、マガキ及びシロスジフジツボ幼生の研究結果に関しては、論文投稿を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度と3年度は、これまで室内実験で得られた結果を基に、(1)野外での実証実験と(2)幼生の付着行動における光の影響を遺伝子レベルで解明することを目標としている。令和2年度に行う予定である実証実験は、付着生物(汚損生物)の被害が大きい海域とマガキの採苗場である海域で、LEDsを装着した基盤を一定期間垂下した後、基盤に付着している生物の種同定と重量測定を行う計画である。次に、令和2年度と令和3年度の両年に渡り、幼生の付着行動に与える光の影響を遺伝子レベルで解析する予定である。実験には当初の計画である2種類、フジツボ類(シロスジフジツボ)とマガキの付着期幼生を用いる。幼生の付着行動と関連性があると推測される遺伝子bsc-6、L-amino acid decarboxylase、Aggrecan core protein、Protocaherin Fat 4などの発現量を、各光条件下で24時間暴露した幼生と、暗黒下(対照区)で静置した幼生の間で比較し、幼生の付着行動において光の果たす役割と共に、各遺伝子の機能を明らかにしていく計画である。
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Research Products
(1 results)