2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of light wavelength and intensity on the larval attachment behavior of marine sessile organisms
Project/Area Number |
19K15897
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金 禧珍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (10823437)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 付着動物 / 付着期幼生 / 光波長 / 光強度 / 走光性 / 付着行動 / 防汚システム |
Outline of Annual Research Achievements |
二枚貝類やフジツボ類などの幼生は、付着期になると光受容体である眼点を持つ。幼生の眼点は、視色素を含有しており、光波長により異なる吸光度値を示す。このような生物学的特徴を基に、光の波長と強度が幼生の行動(走光性と付着行動)に与える影響を研究している。初年度に行った室内実験では、飼育した幼生の行動における光の波長と強度の交互作用を明らかにした。また、付着行動を誘導又は阻害する光環境が付着生物の種により大きく異なることが分かった。今年度は、去年の実験で設定した様々な光環境の中でも、二枚貝類幼生の付着行動を阻害した条件を用いて野外での実証試験を行った。長崎県西彼杵郡時津町西時津郷(大村湾、32°86’N、129°85’E)で2~3週間基盤を垂下し、対照区は自然光のみ、実験区では自然光に夜間のLED照射を加えた。その後、基盤を回収し、実験室内でそれぞれの基盤に分布していた生物の種同定と総湿重量を調査した。対照区には、稚貝類、稚フジツボ類、多毛類、ヨコエビ類、イソギンチャク類、ウミウシ類、底生性カイアシ類など多くの分類群の生物が観察された。一方、LED光照射を行った実験区では、底生性カイアシ類のみが多量に観察された。このように分布生物の種組成には明確な差が見られたが、総湿重量の有意差は認められなかった。多くの底生生物の幼生は、着底期になると負の走光性を示すため、LED照射を行った実験区で種の多様性は低下したが、正の走光性を持つカイアシ類が多く分布していたため、これらが総重量に影響して対照区に近接した値を示したと推定される。得られた結果は、夜間に使用する人為的光(光汚染)が海洋生物の種の多様性に大きく影響する可能性を示唆する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マガキ幼生の付着行動に与える光波長と強度の影響は「light wavelength and intensity effects on larval settlement in the Pacific oyster Magallana gigas」のタイトルで国際ジャーナルHydrobiologia (IF=2.385)に出版されている。さらに、現在は「フジツボ幼生の走光性と付着行動に与える光の影響」を調べた研究成果を論文化している。このように、研究成果のまとめは円滑に遂行されている。一方で、コロナウィルスの拡大防止のため、様々な研究活動に制限がかかり、計画していた付着行動関連遺伝子や環境ストレス関連遺伝子の発現量解析や学会参加などが不可能になったため、進捗状況はやや遅れていると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
光の波長と強度が付着生物幼生の行動に与える影響を総括的に考察するため、2021年度は次の2つの実験を行う予定である。(1)室内実験では、幼生の付着行動や環境ストレス耐性に関連する特定遺伝子の発現量を分析し、光環境が幼生に与える影響を分子生物学的視点から解釈する。付着期幼生のみ眼点を持つ二枚貝類であっても、眼点の役割については未だ異論が多いため、これらの実験を通じてその役割を明確にしていく必要がある。 2020年度の野外実験は、春(5月)及び夏(8月)は実施出来ず、秋(9月)と冬(11月)のみとなったため、多くの付着生物に対するLED照射の影響は観察できなかった。そのため、(2)2021年度の野外実験は、春から実験を開始し季節によるLED照射の影響を調査する。なおかつ、実証試験の結果を基に、光を用いた採苗技術向上や防汚システムの開発などを目指す。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルス拡大防止のため、様々な研究活動に制限がかかり、本来計画していた遺伝子解析実験や学会参加などが出来なくなったため。
|
Research Products
(1 results)