2020 Fiscal Year Research-status Report
Assessment model development and management strategy evaluation for fisheries stocks under regime shifts
Project/Area Number |
19K15905
|
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
西嶋 翔太 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), 任期付研究員 (50805116)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | レジームシフト / 水産資源 / 管理戦略評価 / 状態空間モデル / 最大持続生産量 / 管理基準値 / 乱獲 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイワシやマサバ、スルメイカといった日本の食卓に重要な水産資源は、新規加入量が年代によって大幅に変化することで知られており、こういった現象はレジームシフトと呼ばれている。加入量の変動を正確に評価するためには、漁獲量や資源量指標値の測定誤差を考慮することが重要である。令和2年度は、スルメイカを対象に、測定誤差と過程誤差を分離することのできる状態空間資源評価モデル (SAM) の開発と、管理戦略評価 (MSE) および管理基準値の計算を行った。 まず、年齢構造のないスルメイカ資源を対象に新たな状態空間資源評価モデルSAMUIKAを開発し、再生産関係においてレジームが検出されるかどうかを検討した。SAMUIKAは冬季発生系群と秋季発生系群を同時に扱うことで、資源量推定を可能にするモデルである。解析の結果、1990年頃と2015年頃に再生産関係のレジームシフトが生じており、最大持続可能漁獲量 (MSY) が2~3倍程度変化することが明らかになった。 さらにスルメイカにおいてレジーム分けした場合としなかった場合の管理基準値を計算し、漁獲パフォーマンスを比較したところ、レジームを仮定しない場合でも大きな損失はない一方で、レジームを仮定するとレジームの見極めを誤った場合のリスクが大きいことが ことが明らかになった。また、再生産関係を使用しない管理基準値 (F%SPR) や、再生産関係の不確実性を考慮したMaximum Minimum Yield (MMY) の計算を行った。その結果、これらの管理基準値を使用した場合でも漁獲量や資源量が大きく減少する可能性は低いことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スルメイカを対象にしたレジームシフトの検出が可能な新たな状態空間資源評価モデルを開発し、この成果をすでに国際誌Population Ecologyに発表済みである。本論文は、海の生態系サービスに関する特集号の一部であり、企画者として本特集号の前書きの執筆も行った。一方、レジームシフトを考慮した管理戦略評価については計画通り進展していない部分もあり、「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
スルメイカを対象とした管理戦略評価 (MSE) を行う。レジームに基づく漁獲制御ルールと、レジームを考慮しない漁獲制御ルールを構築し、平均漁獲量や漁獲量の安定性、資源崩壊の確率、最大持続漁獲量の達成度などの指標を基にパフォーマンス評価を行う。また、マサバ太平洋系群を対象としたレジームシフトに基づく生物学的パラメータの変化を考慮した最大持続可能漁獲量や管理基準値の計算を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により予定していた出張が行えずに旅費に計上していた予算が余ったことが次年度使用額が生じた理由である。未発表の成果の英文校閲費として使用する予定である。
|