2019 Fiscal Year Research-status Report
海獣寄生虫における分類学的混乱の解消:水産物の安全安心強化へ向けて
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19K15910
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
片平 浩孝 麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (70722651)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鰭脚類 / 内部寄生虫 / 鉤頭虫 / ネズミイルカ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品衛生上問題となりうる海獣寄生虫の分類学的混乱を解消することを目的として、特に手付かずであった種を対象に成虫の形態および分子系統を精査し、誰もが簡便に種同定できるようになるための分類学的基盤(検索表およびDNAデータベース)を構築する。 研究開始年度である本年は、海棲哺乳類研究者のサポートのもと、日本沿岸に定着・来遊する鰭脚類(トド・キタオットセイ・ゼニガタアザラシ・ゴマフアザラシ・クラカケアザラシ・アゴヒゲアザラシ・ワモンアザラシ)の消化管内寄生虫を可能な限り収集することに努めた。その結果、今後の基盤作りに十分なサンプル入手が実現したため、次年度において本格的な同定・分類作業に入る予定である。 なお、一連の研究活動に伴う副次的成果として、根室海峡にて混獲されたネズミイルカ科2種(ネズミイルカ、イシイルカ)の腸内寄生虫相および寄生レベルを比較した研究成果を国際誌に公表した。また、形態的種判別が有効であることをすでに確認している鉤頭虫類に関しては、特にトドを対象に寄生レベルの定量化を進めることができた。調査の結果、北海道沿岸に来遊するトド個体にはCorynosoma属3種(C. villosum, C. strumosum, C. semerme)が寄生していることが明らかとなり、さらに、最も優占的(全個体の98%)なC. villosumに関しては、宿主あたり平均しておよそ4千個体も重度寄生していることが明らかとなった。この成果については、次年度中に英語論文としてとりまとめ、国際誌への成果報告を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内を代表する海棲哺乳類研究者の方々に多大なるご支援をいただき、円滑かつ十分量な成虫サンプルの収集を実現することができた。また、得られた成虫サンプルについては、衛生動物学的に重要であるにも関わらず情報不足が著しい鰭脚類寄生のアニサキス科線虫を中心にDNAバーコーディングを実施し始めている。以上の理由から研究が順調に進展しているとの自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 鰭脚類寄生のアニサキス科線虫成虫の形態記載および分子的記載を進め、幼虫での遺伝的同定を可能とするDNAバーコーディングを可能な限り充足させる。 2) 簡易的な同定法を確立した分類群に関しては、各宿主に対する寄生状況の定量化を随時進めていく。
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Causes of Carryover |
分析に係る一部経費を次年度に回すこととした。
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