2020 Fiscal Year Research-status Report
海獣寄生虫における分類学的混乱の解消:水産物の安全安心強化へ向けて
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19K15910
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
片平 浩孝 麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (70722651)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鰭脚類 / 内部寄生虫 / アニサキス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品衛生上問題となりうる海獣寄生虫の分類学的混乱を解消することを目的として、特に手付かずであった種を対象に成虫の形態および分子系統を精査し、誰もが簡便に種同定できるようになるための分類学的基盤(検索表およびDNAデータベース)を構築する。 本年度は、初年度に集めた寄生虫サンプルを対象に、形態学的および分子生物学的精査を順次実施した。標本収集については、初年度の段階で十分量が確保されたため、作業の全てを種判別に費やすこととなった。これらの中でも、ネズミイルカ・イシイルカ・クラカケアザラシ・ゴマフアザラシ・ゼニガタアザラシ・キタオットセイから得られたアニサキス科線虫の分子生物学的同定の進展が大きく、例えば、ネズミイルカにAnisakis simplex s.s.が寄生することを東太平洋域で初めて特定し、国際誌に報告するに至った。 これに加え、北海道周辺にみられる鰭脚類寄生性のアニサキス科線虫の種組成に関する進展があり、Contracaecum属に該当する種はC. osculatum type Aのみから成ること、Pseudoterranova属では検査個体が全てP. azarasiに該当することを明らかにした。寄生関係の定量的評価に関しては、これまで情報が不足していた中深層性のクラカケアザラシを重点的に分析し、胃内にみられるアニサキス科線虫の多く(67-72%)がC. osculatum Aに該当する種で構成されることも明らかすることができた。これらの成果については英語論文としてとりまとめ、現在、国際誌に公表する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまで集めてきたサンプルを対象に順次分析を進めた。進展状況は極めて順調であり、これまで不足していたアニサキス科線虫類における成虫の情報を蓄積しつつある。本課題の目的とする内容を充足できていると判断し、以上のような自己評価にさせて頂く。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目と2年目については、重要度の高い主要な分類群にエフォートを絞って分析を進めてきた。それ以外にも、当初の予定通り、他の寄生虫分類群に該当する標本の入手に成功している。次年度は最終年度であるため、宿主-寄生虫の種リストを継続的に刷新していくとともに、得られた成虫標本を適宜同定していく。
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Causes of Carryover |
分析に係る一部経費を次年度に回すこととした。
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