2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15913
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
片倉 文彦 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10756597)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 魚類2型免疫応答 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類の寄生虫感染症は水産養殖現場において甚大な経済的被害をもたらしているが、宿主生体防御機構の理解が乏しいため、それら寄生虫病の予防法は確立されていない。本研究は、魚類寄生虫病の制御にむけて、寄生虫感染モデルを用いて2型免疫応答に関わる細胞や分子の同定および機能解析を行い、それらの時空間的ネットワークを解明することを目的とする。 2019年度は、魚類における2型免疫応答に関与する分子の同定と機能解析ならびにモノクローナル抗体の作製に着手した。なお本研究は、クローン系統が存在し免疫学研究に適したギンブナおよびその近縁種であるコイを対象として行った。まず、哺乳類のIL-3, IL-5およびGM-CSFと進化学的に関連が深い魚類特有のサイトカインIL-5famをコイゲノムから同定した。当分子リコンビナントタンパク質は共通β鎖受容体(βc)を介してSTAT5を活性化させ、主な造血器官である腎臓細胞の増殖・コロニー形成を促した。IL-5fam刺激で増殖した細胞は、PAS+、Gata2+、βc+などの性質をもち、好酸球/好塩基球/マスト細胞型(EBM型)の顆粒を有することを示した。すなわち、IL-5famはEBM型顆粒球の産生に寄与するサイトカインであることを魚類で初めて明らかにした。 また、抗原特異的抗体価の測定やB細胞活性化機構の解明にむけて、ギンブナIgTおよびIgD遺伝子の単離に成功した。既に各定常部をコードする遺伝子領域をタンパク質発現ベクターに連結し、組換え体の作製・精製に成功している。さらに、ヘルパーT細胞を識別可能なモノクローナル抗体を作製するため、ギンブナCD4-2分子をラットNRK細胞株に強制発現させ、免疫原としての細胞株CD4-2/NRKを得た。今後、上記の種々の抗原を認識するモノクローナル抗体を作出することで、魚類2型免疫機構を解析する強力なツールとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類において2型免疫機構を解明するには、免疫応答時に活躍する細胞や分子それぞれの役割を理解する必要がある。本研究では、魚類特有のサイトカインIL-5famを同定し、哺乳類のIL-3やIL-5と同様にEBM型顆粒球の産生を促すという特性を魚類で初めて明らかにした。以上は、魚類におけるEBM型顆粒球や2型免疫応答の特性解明にむけて極めて重要な成果であると考えられる。また、B細胞やT細胞の表面マーカーに対するモノクローナル抗体作製に必要な抗原の取得にも大方成功しており、当初予定していた通りの研究がおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2型免疫応答に関連するサイトカインとして、IL-5famだけでなく、IL-4/13やIL-6などのリコンビナントタンパクを作製済みであり、各分子のB細胞に対する作用について調べていく。また、B細胞やT細胞の表面マーカーに対する抗体の作出に成功した暁には、寄生虫感染時における種々の免疫細胞の機能、動態、遺伝子発現などを詳細に解析し、魚類2型免疫応答の全体像を明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)