2019 Fiscal Year Research-status Report
毒結合タンパク質複合体の解析によるトラフグ毒輸送機構の解明
Project/Area Number |
19K15915
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
辰野 竜平 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (70771872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トラフグ / テトロドトキシン / フグ毒結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
トラフグの天然個体(雌:約1,700 g、雄:約1,500~2,400 g)について活魚で入手した。体重と生殖腺重量から生殖腺体指数を算出したところ、雌は10、雄は17~27であった。これらの試料について、血液を採取した後に皮、筋肉、肝臓、および生殖腺(精巣もしくは卵巣)の摘出を行った。血液については、遠心分離後に上澄みを取り出し、ウエスタンブロット法に供するまで-30℃で保存した。一方で、前述の4部位については抽出作業を行った後に、蛍光検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(HPLC-FLD)にてTTX濃度を測定した。分析の結果、肝臓もしくは卵巣が主要なTTX蓄積部位であることがわかった。 養殖トラフグのTTX非保有個体(雌:1,500~1,600 g、雄:1,500~1,700 g)については、活魚で入手した後にTTX含有餌料の経口経管投与実験を行った。これらの生殖腺体指数は、雌が5~8、雄が16~21であった。TTX含有餌料投与個体については投与24時間後に取り上げて血液採取後に皮、筋肉、肝臓、生殖腺(精巣もしくは卵巣)の摘出を行った。また非投与個体についても血液採取と部位の摘出を行った。血液については天然個体と同様に処理して、得られた上澄みは-30℃で保存した。摘出した4部位についてHPLC-FLDを用いたTTX濃度の測定を行い、トラフグ体内に取り込まれたTTXは主に肝臓や卵巣に移行したことを明らかにした。これまでに2,000 g近い個体を用いたTTXの投与実験が行われた例はなく、雌雄ともに1,500 g以上の個体であれば、主要なTTX蓄積部位は肝臓もしくは卵巣であることが推察された。この段階のトラフグについて、雌雄ともにTTX投与個体、非投与個体の血漿を手に入れることができたので、今後はこれらをPSTBPに対する抗体を用いたウエスタンブロット法に供する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記載したように、トラフグの天然個体と養殖個体の入手ができ、養殖個体については実験によりTTX投与個体、TTX非保有個体を手に入れることができた。これらの血液を採取し、各部位のTTX濃度の測定を行った。本来はフグ毒結合タンパク質PSTBPに対する抗体を用いたウエスタンブロット法を用いて、今回入手したトラフグの血漿に存在するPSTBPの複合体を検出する予定であった。しかし、PSTBPの抗体が冷凍庫の故障により使用できなくなったため、現時点ではウエスタンブロット法による実験の遂行が困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
PSTBPの抗体を用いたウエスタンブロット法を実施するために、PSTBPに対する抗体の作成を依頼する。抗体の作成が済み次第、前年度の実験で入手したトラフグ天然個体、養殖個体の血液を試料として、ウエスタンブロット法を用いたPSTBP複合体の検出に取り掛かる。 また、引き続き成長や成熟段階の異なるトラフグの天然個体、および養殖のTTX非保有個体の収集を進める。養殖個体についてはTTX投与実験を行い、TTXの投与量、TTX投与後の取り上げ時間などとPSTBP複合体の発現について検討可能な試料を入手する。 一方で、入手したトラフグの肝臓を用いて、PSTBP相同遺伝子の遺伝子発現量の変動解析についても取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
2020年3月に開催予定の春季水産学会にて発表することが決まっていたが、コロナウイルスの影響で中止となり、その旅費として計上していた金額が残ってしまった。この分については試料数を増やし実験データの信頼度をより高くするために、翌年度の養殖トラフグの購入費用に充てる予定である。
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