2020 Fiscal Year Research-status Report
毒結合タンパク質複合体の解析によるトラフグ毒輸送機構の解明
Project/Area Number |
19K15915
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
辰野 竜平 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (70771872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トラフグ / テトロドトキシン / 毒結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施したトラフグのTTX非保有個体(約1,600 g)に対するTTX投与実験で得られた皮、筋肉、肝臓、生殖腺(卵巣もしくは精巣)に加えて、新たに消化管についても蛍光検出機を備えた高速液体クロマトグラフ(HPLC-FLD)を用いてテトロドトキシン(TTX)濃度を測定した。消化管の結果を踏まえて解析したところ、雌個体と雄個体で体内へのTTXの取り込み量に差はみられなかったが、肝臓におけるTTXの蓄積量に差が認められた。トラフグ属魚類では生殖腺以外の部位においてTTX蓄積の雌雄差が検証された例は乏しく、トラフグでは初めての知見となる。また、既報のトラフグに対するTTX投与実験では皮からTTXが検出されていたが、上述の実験ではいずれの個体も皮からTTXが検出されなかった。本研究では、TTXの主要な蓄積部位の移り変わりとTTX結合タンパク質PSTBPの複合体の比較、解析を行うため、上述の結果は重要な知見となる。上述の実験に用いた雌個体と雄個体から血液を採取しており、今後はPSTBPの発現プロファイルについてその抗体を用いたウエスタンブロット法にて検出し、解析する予定である。 ヒガンフグの天然個体を活魚で入手して、血液を採取した。採取した血液は直ちに遠心分離を行い、上清を分取して-30℃で保存した。PSTBPはヒガンフグから単離されたTTX結合タンパク質であり、新しく抗体を作製した際にその有用性の確認に活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
保有していたPSTBPの抗体が昨年度使用できなくなったため、あらたに抗体作製を進める予定であったが新型コロナウイルスの影響で作業開始の目途はたっていない。また、同ウイルスの影響により、所属機関における講義、学生実験、実習、学位に関わる研究などの活動をその状況に応じて変更することになり、多大な時間が必要であった。これらの点から、令和2年度における計画は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も新型コロナウイルスによる制約は多いが、可能な限り実験を進めていく。ワクチン接種が進んだ秋から冬にかけて、より本格的に実験に取り組めるものと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度に機器の故障により保有していたTTX結合タンパク質の抗体が使用できなくなってしまった。2020年度にはその問題点を解消するために抗体作製に取り組む予定であったが、新型コロナウイルスの影響により作業が進んでいない状況である。次年度使用額については、前述した抗体作製関連の予算に該当する金額である。本年度はこの予算を用いて抗体作製を行い、並行して2021年度の予算で2019年度および2020年度に収集した様々な条件のトラフグを試料とした実験を進める予定である。
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