2019 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける契約農業の持続的発展:在来商人の企業家的特性に着目して
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19K15917
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池田 真也 茨城大学, 農学部, 助教 (40816823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伝統的流通 / 契約栽培 / スーパーマーケット / ジャワ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドネシアの農産物流通を対象に、小規模農家が契約栽培に適応するための条件を、その仲介者となりえる在来商人および農業企業の観点から明らかにすることを目的としている。また、インドネシアで生じている農産物流通の変化の持続可能性を定量的に検討する。 初年度は1つ目の課題に注力し、ジャワの契約栽培の実態把握を試みた。そこで契約栽培が導入されていたバンドゥン県において、8月に聞き取り調査を行った。特に、スーパーマーケットへの販売に特化したサプライヤー企業(Specialized suppliers、以下SSと記載する)について2006年時点(世界銀行プロジェクトが同じSSを2006年に調査している)と現段階での変化を明らかにした。当初は、SSが市場の中心的立場にあるものと想定していたが、現在はそうではなく、むしろSSとの契約栽培でマーケティングのノウハウや生産管理技術を向上させた生産者が市場の中心として新たに台頭していた。そして生産者はSSだけでなく在来商人とも取引を行っているのである。調査地域は契約栽培のモデルケースとして注目を集めていた地域であり、ジャワ全体が同じ状況というわけではない。しかし、今後の小規模経営農家にとっての農産物流通の進展を検討する上で、伝統的流通、および在来商人に着目する重要性が高まっていると言える。 新型コロナウイルスの影響により現状では先行きが不透明であり、1つ目の課題に影響が出る可能性がある。そこで、補助事業期間中に現地調査を実施できない可能性まで考慮し、2つ目の課題である、インドネシア家計生計調査のデータを用いた分析を優先的に進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、バンドゥン県において現地調査を実施することができた。そこで調査結果をもとに論文のドラフトを執筆しており、次年度に国際誌に投稿する予定である。なお、現地調査の結果から野菜流通において、生産契約としての契約栽培が行われていないことが判明したため、次年度の現地調査の具体案を修正した。つまり、来年度以降、契約栽培が行われなくなった要因を探る現地調査をSS、農業企業、在来商人、そして農民グループに対して行う必要がある。次に2つめの課題に関しては、当初想定していた契約栽培とそれ以外を比較するよりも、現地調査の結果から伝統的流通に着目し、その持続可能性を評価する方向で進める方が良いと考えた。中でも伝統的流通の市場価格が近年上昇していることは基礎的な分析として注目したい。そのため予備的な分析として、伝統的卸売市場の価格データを使用し、在来商人の市場行動を検討した論文を1編出版した。このように、現地調査では研究計画で想定していなかった結果を得たものの、当初の研究目的に沿った形での修正を行っており、また研究成果も上がっている。そのため、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では令和2年度にSS、農業企業、在来商人、そして農民グループへのアンケート調査を実施する予定であり、既にパジャジャラン大学のカウンターパートとも話を進めていた。しかし、新型コロナウイルスの影響により現状では先行きが不透明であり、1つ目の課題に影響する可能性が大きい。補助事業期間中に現地調査を実施できない可能性まで考慮し、現状のデータで可能な限り分析、執筆を進める予定である。その際、理論分析や、二次データを利用した分析の検討も行う。ただし、状況によっては現地調査が可能になる場合もあるため、その準備も進める。他方で、2つ目の課題に関しては、分析枠組みに修正があるものの、優先的に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の現地調査で使用する予定だった備品(タブレットなどの電子機器やソフトウェア)について、次年度の現地調査の前に使用した方が調査員のトレーニングになると判断したため、次年度に使用する判断をした。
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Research Products
(2 results)