2020 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける契約農業の持続的発展:在来商人の企業家的特性に着目して
Project/Area Number |
19K15917
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池田 真也 茨城大学, 農学部, 助教 (40816823)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ジャワ / 契約栽培 / スーパーマーケット / ホールドアップ問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる本年は、1年目に行った現地調査の結果を基に研究を進めた。まず、契約栽培の仲介者となりえる在来商人および農業企業の2006年から2019年までの状況変化に関する聞き取り調査の結果を踏まえ、契約栽培の持続条件の分析に取り組んだ。特に生産要素に関する同意を必要とする生産契約の成否をホールドアップ問題としてモデル化して分析した。その結果、まず伝統的な卸売流通の価格水準が高騰していることが生産契約の持続性を毀損していることを明らかにした。他方で、一部で生産契約が維持されている事例との比較分析も行い、共同体メカニズムによる履行強制が地域によっては機能している点、農業企業が単に生産要素を投資するのではなく、(生産販売の指導など)訓練費用に関する投資を行っている点がホールドアップ問題の回避に寄与していることを明らかにした。一般的に生産契約としての契約栽培はインドネシアにおいて浸透しないことが伺えたが、それは農産物市場の発展への処方箋として、契約栽培の導入に効果がないことを意味しない。モデルケースとして提示された契約栽培は持続しなかったものの、小規模経営農家の市場参加を促進し、その地位を向上させた点で価値のある試みと理解できる。これらの結果の一部は次年度刊行予定の単著の一部に収録される予定である。また、パジャジャラン大学の共同研究者と共著論文のドラフトを作成した。他方で、本年はコロナ渦により現地調査を実施できなかったため、前年度に計画したように、農村地域の持続可能性を判別するための指標を研究した。特に、インドネシアの持続可能性を判別するための基礎的な研究を行い、その成果の一部が国際学術雑誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要な課題に関しては、契約栽培の現地調査結果を論文の形にまとめたことで、ある程度完成形が見えている状況である。また、持続可能性指標に関する課題に関しても国際学術雑誌に掲載されるなど、一定の成果を得ることができた。しかし、インドネシアの農産物流通の持続可能性を明らかにするためには、現地調査を要するマイクロデータの取得とその分析も欠かせないなか、調査実施の目途が未だに立たない。インドネシアの地域経済に着目すれば、地理情報データやインドネシア家計生計データを用いた分析などの代替的な手段を検討する必要があると考える。従って、本年度は一定の成果は出せているものの、次年度以降の調査が未定な状況を踏まえ、「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得た研究成果を出版するための作業を進めていく。また、研究計画にある現地調査に備え、準備だけは進めていく予定である。しかし、コロナ渦のため現地調査が実施できない可能性がある。そのため、代替的な手段として、地理情報データやインドネシア家計生計データを用いる方法を検討する。そのほか、途上国一般の農産物流通の変化に関する文献を精査することを通じて、インドネシアの農産物流通の川上で生じている変化の影響を定性的に議論することも検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナ渦により当初予定していたインドネシアでの現地調査が実施できなかったため。状況が改善次第、次年度の調査および関連データの入手などに使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)