2022 Fiscal Year Research-status Report
ネパール中等教育における実践的農業教育モデルの構築
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19K15918
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浜野 充 信州大学, 学術研究院農学系, 講師 (30626586)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 実践的農業教育 / 中等教育における農業教育 / 参加型教育改善手法 / アクションリサーチ / オンラインGISの活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネパール中等教育において2014年より技術教育課程が導入された。本研究では、技術教育課程のなかで農業教育課程に焦点を当て、その実践的教育モデルの構築を目的とする。これまでの調査では、2016年から2018年においてJICA草の根技術協力事業を実施し、教育制度を把握するとともに、ムスタング郡の山間地域における対象校(中等教育)の農業課程における教育体制・指導方法の課題抽出・改善のためのアクションプランを作成し、2018年に半年間試行した。2019年度に実施した調査では、試行された授業内容や指導方法と教員・生徒の意識の変化、それらの授業方法の継続状況について把握した。2018年に試行された授業改善方法は2019年も実施されており、①現地の農業生産や農業技術について生徒が調査を行い体系的な講義の学びと連携させ、②校内圃場での栽培実習に生育・収量調査や比較試験などの研究要素を導入し、③講義に①②などの内容を理解しやすいよう見える化して取り込み、④校内圃場での農業生産・加工活動に日常的に導入することであった。それら結果の一部を国際農村開発学会誌にて論文として報告した(2020年12月)。2020年度から2021年度にかけて、新型コロナウィルス感染拡大により現地調査ができず、ネパールではロックダウンにより対象高校も休校が続いた。現地での調査ができない中、日本国内で現地の農業情報を把握する調査手法としてオンラインGISを活用しすることで、各地域の農業情報の調査実施および即時的な共有が可能であることがわかり、導入を検討してきた。2022年度は中等教育での授業が対面で実施されるようになり、現地への渡航も可能となったため、対象高校2校において教育の現状や課題抽出、改善へ向けたアクションプランの作成を行った。またオンラインGISの授業導入の可能性の検証のため、使用方法の紹介を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度から2022年度半ばまでの約2年半、コロナ禍において現地への渡航ができず現地農業高校もロックダウンやオンライン授業の実施など通常の教育が行えなかった。そのため、現地農業高校の教育内容や授業方法の現状を把握し、課題抽出、改善方法の提案、実施、評価という一連のアクションリサーチを実施できない状況が続いた。2022年度に下記に示すとおり、調査対象校の相互視察・授業方法の共有による比較および課題抽出を実施するに至った。しかしながら、当初予定した研究機期間内に終了することができないため、本研究を1年間延長することとなり、評価区分を(4)遅れているとした。
2022年度は、9月にカブレ郡およびチトワン郡の農業高校2校を訪問し、教育体制及び授業の実施状況について観察や教員への聞き取りにより把握した。生徒に対して現在の授業の評価や改善してほしい内容についてアンケート調査を実施した。また、2016年度にJICA草の根事業を実施したムスタング郡の農業高校を、他の2地区の対象高校教員とともに訪問し、講義方法や学内圃場・地域の農業現場での実習方法を視察しそれらの実践を行った教員が、当初の課題点や新たに導入した授業方法や効果について説明を行った。12月にはカブレ郡、3月にはチトワン郡のそれぞれの高校を訪問し、学校の農業科教員が自ら他校と比較することで、授業の課題点の抽出や改善に向けたアクションプランの作成を進めている。
一方で、ネパール教育省は農業教育のデジタル化を戦略の一つとしている。コロナ禍でインターネットの普及が進み、各農業高校で作成される補助教材や実習・実験等で取得される情報が、オンライン上で効率的に共有・蓄積でき、効果的に活用される可能性が考えられる。本研究では、ArcGISオンライン調査アプリを紹介し導入可能性を探ることととした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、7月~11月にかけて2~3回に分けて渡航し、現地調査を実施しする予定である。現地対象高校の教員と事前事後にオンライン会議で調査に向けた調整を行っていく。一連の調査では、作成されたアクションプランの確認や課題改善に対する教育的意図を確認するとともに、実施状況のモニタリングを行う。同時に、生徒にも再度アンケート調査を実施し、昨年度実施されたアンケートと比較するとともに、生徒の授業理解度や農業科目を受講することによる地域の農業についての理解度、興味や課題意識等について、比較検証を行う予定である。 一方で、ArcGISオンライン調査アプリの試行により、デジタルツールの授業での活用の可能性を探るとともに、教育内容の改善や農業情報の蓄積・共有に資する学校内もしくは学校間、行政組織との情報共有プラットフォームになりえるかどうかについても検証を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度から2022年度前半にかけて、コロナ禍で現地調査が実施できなかったことにより、研究の進捗が遅れている。2022年度のみでは予定していた調査が実施できないため、次年度使用額が生じることとなり、また2023年度に本研究事業の実施を延長せざるを得ない状況となった。
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