2019 Fiscal Year Research-status Report
農産物市場統合に関する分析手法の開発とその実証的研究
Project/Area Number |
19K15919
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木附 晃実 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40837655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貧困の季節性 / 市場の効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
効率的な農産物市場は、近年経済発展が著しいサブサハラ・アフリカなどの発展途上国における食糧需要の急速な伸びや消費者の嗜好の変化などを、価格という形態で生産者に伝達し、所得獲得機会の上昇などにより生産者の厚生を向上させ、農村部の貧困解消の一助となりうる。また、ある地点での生産ショックが当該地域に及ぼす悪影響(農産物価格の高騰など)を緩和する、リスク分散の機能も有することが指摘されている。さらに、サブサハラ・アフリカの農村部で多く見られる、一年の内で収穫期直前の時期に食糧価格が高騰し、飢餓や栄養失調が発生する飢餓の季節解消のためにも、農産物市場の効率化が必要であることも指摘されている。そのため多くの途上国において、輸送インフラストラクチャーや情報インフラストラクチャーの整備などにより、異なる市場を空間的に統合することによる市場の効率化が試みられている。本研究は、こういった市場の統合度を推計する枠組みを提示し、実証研究への応用を試みるものである。
初年度である本年度は、空間動学的パネルデータ分析手法を用いた農産物市場統合に関する分析手法の開発に専念した。具体的には、オハイオ州立大学経済学部のLung-fei Lee教授らの研究グループを中心に、年々急速な発展を遂げている動学的パネルデータ分析の研究動向のサーベイに専念した。これらのサーベイに基づき、空間動学的パネルデータ分析において固定効果を考慮に入れたGMMによる効率推計を行う手法を開発した計量経済学の理論論文であるLee and Yu (2014)をピア効果特定の実証研究に応用し、現在査読付き英文雑誌に投稿中である。またこれらの研究の基礎をなす、サブサハラ・アフリカの農村部で多く見られる、一年の内で収穫期直前の時期に食糧価格が高騰し、飢餓や栄養失調が発生するメカニズムを描写する論文も現在執筆が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部を査読付き英文雑誌に投稿出来たことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、実証研究の対象地として、マダガスカルのJICA事務所や主要な米市場などを訪問し、市場情報入手のための協力体制を構築する予定であった。しかし現在のところ新型コロナウイルスの影響により渡航の目途はたっていない。安全面を最大に考慮に入れながら動向を見極め、調査対象地の再検討も含めた方策を模索している。
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Causes of Carryover |
海外渡航が中止となったため。現況を鑑みながら、旅費、もしくはデータ購入を予定。
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Research Products
(1 results)