2021 Fiscal Year Research-status Report

総合商社による穀物バリューチェーンの各領域への参入の規定要因に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number	19K15923
Research Institution	Kobe University
Principal Investigator	八木浩平神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50769916)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords	穀物 / 植物油 / 総合商社 / 植物油製造業 / 配合飼料製造業
Outline of Annual Research Achievements	令和3年度は、穀物バリューチェーンにおける川上から川下までの実態を整理するため、総合商社、植物油メーカー、配合飼料メーカーに対する聞き取り調査を実施した。具体的には、米国及びブラジルにおける総合商社の穀物事業の実態として、各社の戦略や参入形態を整理した他、ブラジルにおいて穀物生産者の価格交渉力が強化された要因を分析した。植物油メーカーについては、自由貿易化による植物油供給体制の変化の見通しを得ると共に、国際穀物市場の環境変化に対応した各社の経営戦略を経営戦略論の観点から整理した。配合飼料製造業については、近年のブラジル産トウモロコシ輸入の拡大への対応動向や、コスト削減へ向けた取り組み等を整理した。以上のうち、ブラジルにおける穀物生産者の価格交渉力の強化の要因については、2021年12月に『農業市場研究』で論文が刊行された。ブラジルにおける総合商社の穀物事業と、植物油製造業における各社の戦略は2022年3月に日本農業経済学会大会で個別報告を行い、今後、論文として投稿する予定である。米国での総合商社の穀物事業及び配合飼料製造業の動向については、今後、論文として投稿する予定である。更に、日本を取り巻く穀物バリューチェーンの環境変化の一端を捉えるため、自由貿易化による輸入拡大が見込まれる植物油について、国産と海外産への消費者評価を捉え、輸入拡大の見通しを得るためのWebアンケート調査を企画している。また、ブラジルの大豆生産者の経営判断で重視する点を明らかにするためのアンケート調査を計画している。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason コロナ禍で海外での調査が困難である中で、総合商社、植物油製造業、配合飼料製造業へ聞き取り調査を実施し、米国やブラジルでの穀物事業の実態や、穀物需要者である各製造業の動向を整理しており、我が国を取り巻く穀物バリューチェーンの川上から川下までの実態把握に取組んでいる。また、フードシステムの構造を規定する重要なアクターである消費者の実態を把握するため、アンケート調査も企画し、令和4年度に実施する予定である。更に、ブラジルの大豆生産者の経営判断で重視する項目に係るアンケート調査も計画している。加えて、今後、世界一の大豆輸入国である中国等、東アジア各国の実態把握も行い、共著での図書の刊行を計画している。また、カナダの菜種を巡る総合商社の動向についても、今後調査を実施する予定である。以上のように、コロナ禍で計画通りの調査の実施が困難な中で、穀物流通における諸アクターの動向を把握しようとしていることから、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
Strategy for Future Research Activity	最終年度である令和4年度は、穀物バリューチェーンの川上から川下までの流れに沿って整理すると、下記の内容に取組む。第一に、ブラジルにおける大豆生産者の経営判断で重視する点を明らかにするため、BWSという手法を用いたアンケート調査を実施する。第二に、ブラジルにおける総合商社の企業行動に係る論文を『農業経済研究』へ投稿する。第三に、米国での総合商社の企業戦略と、国際穀物市場環境が変化する中での配合飼料製造業の動向に係る論文を、『農村研究』へ投稿する。第四に、輸出の減少が懸念される菜種について、カナダでの総合商社の取り組みに関する実態調査を行い、その調査をもと学会で個別報告を行う。第五に、植物油製造業を取り巻く自由貿易化等の環境変化と企業戦略に係る論文を、『農村研究』へ投稿する。第六に、輸入拡大が懸念される植物油への消費者評価を分析するため、Webアンケート調査を実施する。特にこの点について、コロナ禍で海外での調査が難しい中で、数量的な側面から穀物バリューチェーンの実態を捉えるため、輸入植物油に帯する消費者評価をWebアンケート調査により分析することとした。第七に、中国や台湾、韓国における穀物供給体制の実態に関する研究を含めた共著による図書を刊行する。
Causes of Carryover	コロナ禍により海外での実地調査が困難となったため、米国やブラジル、中国等への渡航ができず、100万円以上の超過が発生した。今後、フードシステムの構造を規定する重要なアクターである消費者に着目し、輸入拡大が懸念される植物油への消費者評価に関するWebアンケート調査を実施することで、数量的な側面も含めた研究を遂行する計画である。