2019 Fiscal Year Research-status Report
獣害対策におけるNPOの役割―新しいコモンズ形成の可能性と課題―
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19K15926
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
加藤 恵里 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (20728258)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 獣害対策 / 農山村 / 市町村行政 / NPO活動内容の展開 / 民間組織の形態 / 組織経営 / 組織スタッフ / 人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、獣害対策に関わるNPO等の民間組織の活動について、事例把握を中心に調査を進めた。各課題ごとに報告する。 「課題①:NPOの支援内容の概要把握」について、申請者が2016年から調査に入っている民間組織7組織に関して、3年後の変遷を把握した。また、いくつかの市町村にて、獣害関連事業を担当する行政職員に調査を行った。活動の停滞がみられた、あるいは活動内容を変化させたものが3組織、株式会社へ展開したり、分社化するような組織形態の変化が見られたものが2組織、大きな変化が見られなかったものが3組織であった(重複あり)。活動内容の変化の内容は、獣害対策から周辺分野への変化であり、資本金の出どころの変化もみられた。また、多くの組織でスタッフ数や活動地域の変化(主に拡大)がみられた。 「課題②:NPOの集落支援による効果の評価」について、行政受託中心組織の2組織と都市農村交流組織1組織に対して調査を進めた。行政受託中心組織2組織に対しては、獣害対策支援の活動場所(市町村および集落)とその関係の築き方に加え、組織のスタッフに関して聞き取り調査を行った。また、活動の参与観察をすると同時に、活動対象である市町村の一部担当行政職員と集落住民に対しても聞き取り調査を始めた。都市農村交流組織に対しては、都市農村交流イベントにて参与観察を行い、イベント参加者への聞き取り調査を行った。特にスタッフの就職、働き方に関して課題がみられた。 「課題③:NPOの全国ネットワークによる普及の可能性の評価」に関しては、全国ネットワーク組織主催のイベントに2回参加し、活動内容や参加者について把握をした。さらに、全国の獣害対策支援に関わっている民間組織を把握し、それらと全国ネットワーク織との関係性の分析をはじめた。 課題①と③で把握した結果は、2019年11月に開催された林業経済学会秋季大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、調査が順調に進んだ。分析は2020年度に進めていく。具体的な内容に関して、課題ごとに述べる。 「課題①:NPOの支援内容の概要把握」に関しては、予定していたNPO全7組織の代表者に関して、2016年から2019年の3年間の変遷の調査ができた。集落に対するアンケート調査の実施に関しては、下記の設問で詳しく述べるが、実現可能な方法を各組織に相談している段階である。 「課題②:NPOの集落支援による効果の評価」に関しては、行政受託中心組織2組織に関して、深い聞き取り調査に進めた。特にスタッフへの聞き取り調査を行ったことで、獣害対策支援に取り組む民間組織が、今後活動を深め、継続する上で重要な要因を把握することができた。また、獣害対策の支援先であるいくつかの行政職員に対しても聞き取り調査を行った。集落住民への深い聞き取り調査に関しては、候補地がいくつか決まったため、今後進めていく。都市農村交流組織に関しては、予定の2組織のうち1組織で調査を進められた。もう1組織に関しては、豚コレラの発生により活動内容を大きく変えていたことがわかったため、今後も調査対象組織とするか検討する。 「課題③:NPOの全国ネットワークによる普及の可能性の評価」に関しては、全国の獣害対策支援に関わっている民間組織を把握した。今後、これらの組織も調査対象とし、全国ネットワーク組織の関係性の分析を深めることを検討している。また、全国ネットワーク組織の学習会等の活動から、各民間組織のネットワークの形成および展開過程を把握する予定である。この調査対象として、活動に参加していたいくつかのNPO等の団体を選定できたため、これらの組織に関しても聞き取り調査を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナウイルスの感染防止対策に伴い、現地調査へは行きづらい。対人での聞き取り調査が基本であるので、調査の進みが遅くなることは確実であるが、この状況下での調査の形を模索していく。各組織の活動においても、現場に出る仕事、経営への影響、イベントの開催などが厳しく、大きな変化が起きていると考えられるため、新型コロナウイルスの拡大している現状に対し、どのような対応をして活動を維持しているか、どのような展開を考えているか把握したい。 「課題①:NPOの支援内容の概要把握」に関しては、活動内容の概要と課題の把握は進んだ。7組織がこれまで関わった全集落アンケート調査に関しては、内容の変更も検討しながら進める。この調査は、各民間組織の協力が必要であるが、組織自体も活動内容の検討に活動している集落に対しアンケート調査を行っていることが分かり、改めて他のアンケート調査はしにくい。また、各組織との聞き取り調査を通じ、アンケート調査よりもより深い聞き取り調査が求められていることがわかったため、各組織が取り組んでいるアンケート調査結果をもとに、各集落を分類し、これに基づいた集落の選定、および聞き取り調査を進める。 「課題②:NPOの集落支援による効果の評価」に関しては、行政支援中心組織に関わっている市町村担当者に対して、電話等での聞き取り調査を進める。集落住民に対する聞き取り調査に関しては、感染拡大リスクの低いと考える夏に限り、現地調査へ行くことを検討している。また、都市農村交流組織に関しては、活動の変化も反映しながら、活動の参加者や活動場所となっている集落の住民に対する聞き取り調査を検討する。 「課題③:NPOの全国ネットワークによる普及の可能性の評価」に関しては、全国ネットワーク組織の活動および他民間組織への波及を把握すると同時に、全国の民間組織へのアンケート調査等を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの発生に伴い、年度末の出張をキャンセルしたため次年度使用額が生じた。今年度も、計画時に出張旅費として申請したものの使用は大幅に減ると考えられるため、使用計画全体の見直しをおこなう。
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Research Products
(1 results)