2019 Fiscal Year Research-status Report
縮減社会でのローカル・コモンズの持続的運営に向けたコミュニティ・ガバナンスの形成
Project/Area Number |
19K15927
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
衛藤 彬史 神戸大学, 農学研究科, 学術研究員 (50778454)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域資源 / ローカル・コモンズ / コミュニティ・ガバナンス / 農村計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、異なる複数の地域資源を対象に、資源運営の補完的役割を果たす存在として期待されるコミュニティの形成過程における課題や要点を明らかにすること、その上で、縮減社会において持続的な資源運営を可能にするコミュニティ・ガバナンスのあり方を考察することを目指すものである。 初年度は、地域資源管理やコモンズに関する先行研究をレビューし、本研究で採用する研究枠組みや分析方法について検討した。 また、当初予定していた岡山県西粟倉村における森林資源、兵庫県東播磨地域における農業用水やため池等の水資源、兵庫県養父市における棚田や休耕地といった農用地資源に加えて、京都府亀岡市における移動資源、石川県河北潟干拓地における農用地資源、滋賀県高島市におけるかばたや棚田といった水資源および観光資源等を対象に、今後の本格調査のための予備的なフィールドワークを実施した。東播磨地域および養父市では担当者との打ち合わせを数次にわたり実施し、調査・研究の趣旨説明や今後の調査への協力を求めた。 ただし、一部対象地域においては調査の趣旨説明や関連データの収集が不十分であるため、今後より詳細な調査を実施することで、こうした問題に対応する予定である。 初年度は、International Workshop on Agricultural and Resource Economics(2019年7月7日)において報告(事前審査あり)を実施したほか、本研究の方法論に関して国際学会での報告に向けた準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、地域課題の解決を行動目標にもつ非営利活動法人や一般社団法人といった公共的性質を有する団体による活動や、営利団体におけるCSR活動、また社会的起業家と呼ばれるような存在等による公益性の高い事業活動が各地で展開されている。さらに、こうした活動は、多くの場合、活動の理念や目標に共感する一部の地域住民や地域外住民を含んだ緩やかなネットワークを形成している。このような既存の地縁的なコミュニティとは異なる主体が、資源運営の担い手として台頭しつつある。こうした先進的な取組みについて、活動の成果に焦点をあてた事例調査は、これまで比較的多くされているものの、ガバナンスの観点からローカル・コモンズの担い手と位置づけた上での分析は十分にされていない。 このため初年度は、本研究の方法論を確固たるものにすべく、精力的な文献調査を実施した。また、研究対象地でのフィールドワークと合わせて、資源管理に関わる主体への研究への協力を要請した。まだ入手できていないデータや十分に協力を依頼できていない対象地域も存在するが、引き続き調整を進めることで、これら問題は克服できる見込みである。 一方、本研究の方法論に関して、初年度において国際学会での発表を予定していたが、新型コロナウィルスへの対応もあり、参加を自粛している。事態の収束により先が見通しにくい状況ではあるが、渡航の安全性が確保され次第、報告に向けた準備を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな地域資源に関する横断的な調査に向けた準備を進めつつある。文献調査や現地調査で収集した情報をふまえ、資源運営に関する聞き取り項目の準備・作成を進めている。 引き続き対象地域における現地調査を実施するとともに、新たな対象地での地域資源に関するフィールドワークも引き続き実施していく予定である。 日本および日本農山村の事例は、1)先行して人口減少を迎えている点、資源の過剰利用の回避を主たる研究対象としてきたコモンズ論において、2)資源の過少利用から問題が生じている点で特徴的である。しかしながら、国内事例への洞察、また日本人研究者による国内事例調査から得られた知見の国際的な発信は不足している。 そのため、調査実施後は、これら結果をとりまとめ、期間中に国内関連学会および国際学術誌に研究論文の投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度において国際学会での発表を予定していたが、新型コロナウィルスへの対応もあり、参加を自粛している。そのため、主に海外渡航費が次年度以降への繰り越しとなっている。事態の収束により先が見通しにくい状況ではあるが、渡航の安全性が確保され次第、報告に向けた準備を進めていく。
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Research Products
(1 results)